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「先輩やっぱり弱いですね」
「畜生……お前のサンダース卑怯だぞ」

負け惜しみの言い訳を繰り出す先輩。それを受け流したリゼは「さて。」と呟いてサンダースをボールへと戻した。

「じゃあ、アジトに戻りましょうか。」
「そうだな」

コガネシティから少し外れた34番道路から戻ろうとすると、黒い服がチラチラ視界に映った。同僚かな。珍しいな、真昼間から堂々と外に出るなんて。と思ったが、そういえば今日の作戦でコガネシティの閉鎖をする人たちもいたっけ、と思い出した。

ふとその黒の中に、否、黒の向こうに赤が見えた気がした。見間違いか、いや、そんなことは無い!

「!!」

あれは、確かにシルバー様だ。シルバー様を、どうして見間違えようか。

「先輩」
「あ?何だ……って、おいリゼ!何処行くんだよ!」
「先輩は先に戻っててください!後から行きますから!」
「は?あ、ちょっと待てってリゼ!?」

先輩の制止を振り切って、赤を見つけた方向へと走る。丁度コガネシティを挟んで、私達の真反対。35番道路へと、リゼは全力疾走した。



次こそは
あの赤を見失わないように。



「シルバー様!」
「……リゼ」

やっと彼との距離を数メートルまで縮めた私は、肩で息をしながらシルバー様に声をかけた。そしてゆっくり振り返った彼の顔を見て、やっぱりシルバー様だと、あの時見つけた自分に内心よくやったと褒めた。

「また、お会い出来ましたね。」

彼の赤い髪が風に揺れた。流される髪の所為で、表情はよく見えなかったけれど、僅かに見えた口元は、以前のような逆の弧を描いていなかった。

「何となく、お前と会える気がしたんだ。」
「……え?」
「リゼ。」

ピタリと風が止んだ。見えるようになったシルバー様の少し釣りあがった真剣な目が、私を捉えている。

「俺と、勝負しろ。」

シルバー様は、ボールを構えた。
今も昔も、彼の口調には逆らえそうに無いらしい私も、黙ってモンスターボールを手に取った。



10/09/30
15/03/16 修正

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