勝機が見えてきた。
キュウコンの かえんほうしゃは急所に当たったらしく、コトネちゃんのメガニウムは瀕死状態。アテナさんが押されていたとはいえ、ワタルさんのカイリューだって連戦で疲れている様子。アンフェアなのは百も承知。けれど、さっきまで向こうがしてきた事をやり返しただけだ。……そういうところが後手なのだろうけれど。
「ラプラス!」
モンスターボールから出したラプラスは、出てくるなりワタルさんのカイリューに威嚇をした。先ほどのバトルで横槍を入れてきた事を根に持っているらしい。ポケモンは飼い主に似るというけれど、まったくその通りだとリゼは思った。
「カイリュー、いけるか?」
「グォ」
カイリューに問いかけたワタルさんは、カイリューの返答を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をした。無理だと判断したのだろうか。でも、相手が無理だと判断しようがこっちには何も関係が無い。さっきとは逆の展開に、口角が上がるのが自分でも分かった。私達ロケット団も彼等のような一般市民の味方も、本当に紙一重だ。
「ラプラス、カイリューに れいとうビーム。」
私の言葉に従って、ラプラスは口の中で冷気を凝縮して、少し離れていても肌寒く感じるくらいに周りの温度を下げたラプラス。トドメのれいとうビームを発射した。
……筈、だった。
「バクフーン!ふんえん!」
「グルルァ!」
「!?」
突然横から飛んできた炎タイプの技に、氷の光線は溶かされ、蒸発してしまった。唐突に蒸発したために、つい先ほどのバトルの時と同じく、白い水蒸気があたりに分散する。視界が、狭い。
しかしバクフーンとは。
……先ほどの声はヒビキ君の声。先ほどしたっぱの一人と戦っていた。恐らく彼が勝負に勝って、経験をつんだマグマラシが進化したのだろう。
リアルタイムで成長していく彼等に、嫉妬に近い何かが胸を渦巻いた。
「カイリュー、壁に向かって はかいこうせん!」
「ギュゥウ」
白い蒸気の立ち込める中、ワタルさんの声と、カイリューの発する光のようなものがぼんやり見えた。しまった、と思った時にはそれに加えてヒビキ君の声が聞こえた。「バクフーンもきあいだま!」
何とも形容しがたい、固いものがぐしゃぐしゃに押しつぶされる音が廊下に響く。何としてもまず、この視界の狭さを何とかしなければならない。そう判断したリゼは上を飛んでいたクロバットにエアスラッシュを命令した。
ばさり。
大きな羽ばたきの音がするたびに視界は晴れていった。しかし、視界が晴れた先に在ったのは、大きく穴が開いた壁とそこへ乗り込む3人の姿だった。
(しまった、動力室へ侵入された!)
そう感じて彼等に続こうとするリゼの腕を、誰かがガッチリと掴んだ。
アテナだ。
「アテナさん、どうして」
「十分よリゼ。さっきラムダから連絡が入ったの。『次の作戦に移る』ですって」
「次の」
クサイハナが入っているであろうモンスターボールを大事に持ったアテナさんは、もう一方の手で私の頭を撫でた。
「さっ、アイツ等が動力室のマルマインに気をとられている隙に、あたくし達も逃げましょう」
「……はい」
アテナがリゼの手を引いて、彼女達は廃墟と呼んでも可笑しくない程にボロボロになったアジトを後にした。
大方作戦は成功したのかもしれない。けれどリゼとしては、チャンピオンや若きトレーナー達と決着らしきものがついていないことに対して、後ろ髪をひかれる様な、胸をくすぶる不満に顔をしかめた。
不完全燃焼
次にすすまなきゃいけないなんて。
10/09/16
15/03/16 修正
キュウコンの かえんほうしゃは急所に当たったらしく、コトネちゃんのメガニウムは瀕死状態。アテナさんが押されていたとはいえ、ワタルさんのカイリューだって連戦で疲れている様子。アンフェアなのは百も承知。けれど、さっきまで向こうがしてきた事をやり返しただけだ。……そういうところが後手なのだろうけれど。
「ラプラス!」
モンスターボールから出したラプラスは、出てくるなりワタルさんのカイリューに威嚇をした。先ほどのバトルで横槍を入れてきた事を根に持っているらしい。ポケモンは飼い主に似るというけれど、まったくその通りだとリゼは思った。
「カイリュー、いけるか?」
「グォ」
カイリューに問いかけたワタルさんは、カイリューの返答を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をした。無理だと判断したのだろうか。でも、相手が無理だと判断しようがこっちには何も関係が無い。さっきとは逆の展開に、口角が上がるのが自分でも分かった。私達ロケット団も彼等のような一般市民の味方も、本当に紙一重だ。
「ラプラス、カイリューに れいとうビーム。」
私の言葉に従って、ラプラスは口の中で冷気を凝縮して、少し離れていても肌寒く感じるくらいに周りの温度を下げたラプラス。トドメのれいとうビームを発射した。
……筈、だった。
「バクフーン!ふんえん!」
「グルルァ!」
「!?」
突然横から飛んできた炎タイプの技に、氷の光線は溶かされ、蒸発してしまった。唐突に蒸発したために、つい先ほどのバトルの時と同じく、白い水蒸気があたりに分散する。視界が、狭い。
しかしバクフーンとは。
……先ほどの声はヒビキ君の声。先ほどしたっぱの一人と戦っていた。恐らく彼が勝負に勝って、経験をつんだマグマラシが進化したのだろう。
リアルタイムで成長していく彼等に、嫉妬に近い何かが胸を渦巻いた。
「カイリュー、壁に向かって はかいこうせん!」
「ギュゥウ」
白い蒸気の立ち込める中、ワタルさんの声と、カイリューの発する光のようなものがぼんやり見えた。しまった、と思った時にはそれに加えてヒビキ君の声が聞こえた。「バクフーンもきあいだま!」
何とも形容しがたい、固いものがぐしゃぐしゃに押しつぶされる音が廊下に響く。何としてもまず、この視界の狭さを何とかしなければならない。そう判断したリゼは上を飛んでいたクロバットにエアスラッシュを命令した。
ばさり。
大きな羽ばたきの音がするたびに視界は晴れていった。しかし、視界が晴れた先に在ったのは、大きく穴が開いた壁とそこへ乗り込む3人の姿だった。
(しまった、動力室へ侵入された!)
そう感じて彼等に続こうとするリゼの腕を、誰かがガッチリと掴んだ。
アテナだ。
「アテナさん、どうして」
「十分よリゼ。さっきラムダから連絡が入ったの。『次の作戦に移る』ですって」
「次の」
クサイハナが入っているであろうモンスターボールを大事に持ったアテナさんは、もう一方の手で私の頭を撫でた。
「さっ、アイツ等が動力室のマルマインに気をとられている隙に、あたくし達も逃げましょう」
「……はい」
アテナがリゼの手を引いて、彼女達は廃墟と呼んでも可笑しくない程にボロボロになったアジトを後にした。
大方作戦は成功したのかもしれない。けれどリゼとしては、チャンピオンや若きトレーナー達と決着らしきものがついていないことに対して、後ろ髪をひかれる様な、胸をくすぶる不満に顔をしかめた。
不完全燃焼
次にすすまなきゃいけないなんて。
10/09/16
15/03/16 修正