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アルフの遺跡調査から数日間は、アポロ様にお使いを頼まれたついでに、ピッピ人形を買ったりだとか(お金は勿論団に付けて貰いました)、久しぶりに先輩をポケモンバトルでボッコボコにしたりだとかで、のんびり過ごすことが出来た。

そうして、部屋でキュウコンと戯れていると、いつもの無口なしたっぱさんがやって来た。アポロ様が私に用があるらしい。またお使いかな、と思いながら彼に付いて行くと、見慣れたドアが見えてきた。

「じゃあこれで。」

無口なしたっぱさんはそれだけ言うと、回れ右をして行ってしまった。
彼の声が中にまで聞こえたらしく、間髪いれずに「リゼ、入ってきなさい」と、アポロ様の澄んだ声が聞こえた。

「失礼します。」

ドアを開けると、アポロ様は奥の机で仕事をしていた。毎日ご苦労様です。
彼から今回の用事を聞きだすべく、リゼはアポロとの距離を詰める。

「ええっと、今回の、指示はどういったものですか?」
「シルバー様の目撃情報が、多々寄せられていますよ」
「!」

アポロ様の鋭い目が、机の上の資料から私に移る。思わず背筋がしゃんと伸びた。彼の、言葉の意味が理解できなかった。それは、彼を引き止めなかった私を責めているのだろうか。
返答に困り、黙りこくっている私に、アポロ様はフフと小さく笑って、言葉を紡いだ。

「リゼの情報のお陰です。」
「えっ」

思わず声が漏れた。鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしているであろう私を、アポロ様は楽しそうに見ていた。
……けれど、

「しかし、アポロ様。お言葉ですが……我々が探しているのはサカキ様では、」
「確かに、貴女が『サカキ様と一緒ではない』とシルバー様直々に言われたなら、十中八九そうなのでしょう。……が、やはりサカキ様の居場所を特定するには、少しでもサカキ様との繋がりがある人物を監視する事も必要だと考えています。」
「成る程。」

やっぱりアポロ様は、彼のことを誰よりも必要としているのだろう。
自分の慕っている相手が、他の人に好かれていて心の底から嫌だとは思わない。……けれど、自分はそこまで頭が回らなかったことに対して、なんだかアポロ様の方がサカキ様のことを思っているのだと言われたようで、少し胸がモヤモヤした。



小さな嫉妬
(譲れない物だってあるんです)



「その話をするためだけに呼んだのではないのですよ。」

私の胸の内を読んだのだろうか、アポロ様は微笑んだ後、手元にあった資料を私の手に渡してきた。ざっと目を通すと、チョウジのアジトという単語が目に入った。どうやら、今日頼まれるのはお使いでは無いらしい。

「アテナとラムダが、チョウジのアジトで電波実験をするらしいです。」
「資料にもそう書いてあります」

残念ながら、私はお母さんのような研究の才には恵まれなかったらしく、資料の詳細に書いてあるカタカナや英語、数字の入り混じった単語達の事を理解する事は出来なかったけれど、それなら何故私が彼等の手伝いをしに、チョウジのアジトへ出かけるのか? という疑問が新たに浮かんできた。


「私はその、電波がどう……とかは、よく分からないのですが」

そう伝えるとアポロ様は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに理解したらしく「ああ」と短く声を漏らした。

「今回は、この実験を無事に済ませるための警護を頼みたいのです。」
「警護?」
「あまり大声ではいえないのですが、スパイが潜入しているという情報もあるので。」
「!」

スパイ。つまり、ロケット団の敵。……サカキ様の、敵。
つまり、私は何も考えずにアテナさんやラムダさんを守れば良いという事か。そんな結論にたどり着いたリゼは、分かりましたの意味を込めて、首を縦に振った。

「では、よろしくおねがいします。」
「はい!」

アポロが別の資料に目を移したのを機に、リゼは一礼して部屋を出た。



ラムダさんと会うのは久しぶりじゃないだろうか!とスキップしながら廊下を進んでいると、ライトグリーンの髪の青年と角でぶつかった。

「あっ!ランス君!」
「げ。リゼ」

げ。とか一瞬聞こえたことには閉口するとして、自分よりも背が高い、元後輩の現上司を見上げる。(ああ、今日も可愛いなぁ)と癒されムードに入っていると、怪訝そうな顔を崩さないまま、ランス君は口を開いた。

「スキップで歩いてこられましたね。良いことでもありましたか」
「え、あー。チョウジのアジトに出張任務です。」
「そうですか、頑張ってください。」

ランスは社交辞令のように、棒読み口調でその言葉を発したというのに、受け取ったリゼはというと、太陽も顔負けな明るい笑顔を浮かべるから滑稽だ。

「うん、頑張るね!」

はあ。と気の抜けた声、呆れ顔をするランスに背を向けて、リゼはまたスキップで歩き出した。



10/09/02
15/03/16 修正

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