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「社会化見学?おやまあ、珍しいねぇ。」

ゲートで暇そうにしていたおじさんが、先生(先輩)と私を交互に見て言う。それにしても、凄い古い所だな。あそこの池なんてふちの岩にコケがびっしりだ。

「ええ、この子がどうしてもアルフの遺跡に行きたいと言うものですから」

うわぁ、先輩ったら別人過ぎる。何その作り笑顔、気持ち悪! そのくらい爽やかな先輩に、鳥肌が立つ。普段のデコピン飛ばしてくる野蛮な面影は何処へ。

「ほー、そーかそーか、それは良いことだ。お嬢ちゃん、将来は考古学者かな?」
「え?」

考古学者になる気なんてこれっぽっちも無いんですけども。困った風に先輩を見上げれば、『適当に流しとけ』と目で訴えられた。

適当に……ねえ。ここで私の困った癖が出る。

調子に乗りやすい私は、ふざけてやろうと考えたのだ。ふざける相手はもちろん、血統書付きの猫を1匹どころじゃなく何匹も被っている先輩に。
今なら、私の悪戯も見逃してくれるだろう。だって優しい先生だものね?よし悪戯決行。頭の中で悪戯会議を終了させ、先輩を見上げてニヤリと笑う。

「えっとね、おじちゃん……私、先生のお嫁さんになるのー!」
「!?」

そのまま、先輩の腰に抱きつく。……ああ、先輩の反応超面白い。面白いったらこの上ない。そうだよね、今は優しいイケメン先生だもんね。怒らないよね?目が怖いけど怒らないよね?

「なっ、馬鹿か!」

猫を被った先輩先生は、小さくそう言って手で軽く払うものの、何時もみたいにデコピンが飛んでくることは無い。そうだよ、このご時世、教師から生徒への暴力はタブーだもんね。あはは、今までの仕返しだ!ざまあ見やがれひゃひゃ先輩!

「おやおや、それは良かったですなー先生。」
「はあ……」

おじさんには微笑ましい光景に見えるのだろう。いや、私と先輩以外の人が見れば、先生に恋する可愛い生徒が目に映るだろう。当人の内一人が、心底嫌そうな顔をしていても、だ。

「……では、僕等はコレで。」

呆れたような、疲れた顔で先輩は受付ゲートを離れようとしたので私もそれについて行く。後ろを振り向くと、おじさんが手を振ってくれたので、ぺこりとお辞儀をした。



受付のおじさんから見えないところまで辿り着いてから、ひゃひゃ先輩は私を見て、ニ ッ コ リ 笑った。意地悪で暴力的な先輩には似合わない、爽やかな作り笑顔だった。
そして……先輩の右手が、お馴染みの形を形成するのを見て、私は全てを悟って歯を食いしばった。



「あ痛ァ!!!!!!」



学習能力は皆無です。
そんな生徒と、猫を被った先生。



「なーにが、『先生のお嫁さんになるー!』だ!! 気持ち悪ィんだよ8歳!」
「えー? 8歳くらいの女の子って、先生に恋する年頃ですよ!」
「ハァ? ……ったく、もう2度と社会化見学の作戦は使わねぇ。」
「じゃあ何ですか? 親子作戦? それでも『パパのお嫁さんになるー!』って選択が残ってますけど。」
「あーハイハイ、ほざいてろクソガキ。」

スタスタと遺跡の中に入ろうとする先輩を、私も慌てて追いかける。走るたびに額が痛むと訴えると「自業自得だ」と返された。



10/07/27
15/03/16 修正

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