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※ホワイトverシナリオその後解釈
※恋愛要素なし
※レシラム目線/会話注意



マスターがボールから私を出した。
やはり、窮屈な空間よりはこの広い世界の方が私は好きだ等と思っている傍らで、マスターはニンゲンと話をしていた。

「キミは夢があるといった……その夢……かなえろ! すばらしい夢や理想は世界を変える力をくれる! リゼ!キミならできる!!」
「Nくん……?」

どうやらあのニンゲンはリゼと言うらしい。
そういえば、あのリゼという人物は、つい先ほど私の対の存在となるゼクロムに認められたニンゲンでは無いだろうか。ああ、確かにそうだった。
あのニンゲンの持つ理想は素晴らしいものだった。私としては真実を求めるマスターの味方をせざるを得なかったが、ゼクロムはリゼと一緒に居る道を選んで幸せそうだ。

「ねえ、N君、それってどういう……そんな、お別れみたいな、事……言わないでよ」

リゼはマスターに一歩近づいた。目には焦りと不安を混ざらせた色を浮かべている。マスターは、そんなリゼの顔を見て、辛そうに笑っていた。

「それじゃ…… サヨナラ……!」
「N君!」

どうして! 今からだってやり直す事は出来るじゃない!
そう叫びながらマスターと距離を詰めるべくかけだすリゼ。そんな彼女を横目に、マスターは私の背中に飛び乗った。

「レシラム、とりあえずこの城から離れてくれるかい」
(マスターの頼みなら、)
「……ありがとう。」

えぬくん! えぬくん! まって!Nくん!
彼女の悲しそうな声を後ろに、私はマスターに言われた通りに城から飛び出した。



(良かったのですか?)
「何が?」

城から飛び出て10分程。行く当てもなくただ北へ北へと飛んだ私は、そろそろ良いだろうと進むのを止めてその場に滞空した。そして背中に掴まったマスターに問うと、逆に問われてしまった。
マスターめ、しらばっくれる気か。

(リゼというニンゲンの言う通り、まだやり直せるのでは?)

別に、マスターが悪い事をしていたのか如何かなんて、私には分からない。所詮人間の考える事がポケモンである私に分かる訳が無いのだ。
それがニンゲンと共に生きるポケモンの勤め。主人が正しいと思う事は正しい、間違っていると思う事は間違っている。だが、今のマスターには少しの迷いが窺える。だから問う。

(考えを改めるのは、悪いことではないと思いますが)
「ふふ、言ってくれるね。レシラム」

「ただ。」マスターはあさっての方向をみて呟いた。

「レシラム・・・いつボクがやり直さないと言ったかな?」
(……)
「そうだよ、ボクはやり直してみせる。……けれど、あのチャンピオンやリゼと再び会うのは、ボクがやり直しきってからだ。」
(成る程)

マスターは頭が良い。時々私にも分からない事を言うが、今の彼の言葉は私にだって理解できた。
しかしマスターにも、プライドという物はあるのだな。ゲーチスという男に「人の心を持たぬバケモノ」呼ばわりされたりもしたが、やはり彼は普通の人間とそう変わらない。

(では、これからどうしますか)
「そうだね……まずは、今まで迷惑をかけた人達一人一人に謝りに行こうか。」
(迷惑をかけた人、というと。)
「プラズマ団にポケモンを奪われた人達かな」
(それはそれは、かなり大きな規模になりますね)

フ、と笑うとマスターも柔らかな笑みを浮かべた。

「レシラム……これからも、ボクと一緒に居てくれるかい?」
「グォ」
「……ありがとう」



私は、マスターの指示する遥か南の方向へ向かうべく、身体を捻って旋回した。

「レシラム、ボクは空が飛べないんだからもうちょっと落ち着いて……落ちちゃうじゃないか。」
(申し訳ありません、マスター)

マスターは、最初に出会ったときよりも自然に笑うようになった。
今のマスターは真実を追い求めていないというのに。それでも私が仕えたいと思うのは、きっとマスターのこの笑顔の所為だろう。
……リゼには、感謝しなくては。

「じゃ、行こうか。」

マスターの言葉に頷いて私は、私達は、南へと飛んだ。



英雄とその従者
(冒険はまだ始まったばかり)



10/09/28


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