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※恋愛要素なし



「リゼは、ポケモンに優しいんだね。」
「そうかな。」

そう言って数日前に出会ったばかりのN君は、私の隣で毛繕いをしていたモノズの頭を撫でた。
(あ、危ない。)
モノズは目が見えないから、よく分からないものにはとりあえず噛み付く習性があるのに。

「噛まれちゃうよ」
「大丈夫、ボクはトモダチと話が出来るから。」
「ふうん。モノズ、何ていってる?」
「撫でてもらって嬉しい、って。」

そういってN君は笑った。綺麗な横顔だ。

「N君ってさ、本当にポケモンとお話できるの?」
「あれ、リゼ……信じてくれないの?」
「いや……。」

ぶっちゃけた話、信じていない。N君には悪いけど、所謂電波人間なんじゃないかと思う。だってほら、ポケモンとお話が出来るだなんて。いや、本当に出来たらそれは凄い事なんだけど、でも皆それが出来ないから苦労しているのだ。
けれど、N君は悪い人じゃないと思う。だって、ポケモンを見る目は、私が今まで出会ってきた人たちの誰よりも優しいから。

「……私も、ポケモンとお話できるかな。」
「リゼが?」

N君の視線が私に突き刺さる。う、私変な事言っちゃったかな。
それにしても、彼の睫毛は異様なまでに長い。そんな関係無い事を考えて、N君の視線から思考をずらそうと試みたのだけれど、その必要は無かった。彼の透き通るような声に、思考が囚われてしまったのだから。

「そうだね、リゼなら出来るかもしれない。」
「本当?」
「だって、リゼは優しいから。」

彼は、モノズから手を離した。
モノズは、急に離れたN君の手を捜すようにキョロキョロとしていた。珍しい。何も見えないモノズが、何かに固執するだなんて。

「……良い子だね。」

N君は、目を細めて笑った。ただ、その笑い方はさっきまでとは少しだけ違って、悲しそうだった。

「……どうしたの?」

声をかけると、N君は吃驚したような顔をした。

「え?」
「何か、N君……辛そう。」
「……」

N君は、目を泳がせた。そして、彼の口が小さく開き、そこから息と一緒にか細く小さな声がもれるのを、私は静かに待った。

「……ボク、リゼみたいな人間と接するの、初めてだから。」
「そっか」

きっと、N君は今まで辛い思いをしたんだろうな。例えば、……誰からも愛を与えてもらえなかった、とか。勝手に過去を考えるだなんて失礼かもしれないけれど、N君の様子を見る限り、そうとしか思えなかった。

「ねえ、リゼ。」
「どうしたの、N君。」

N君は視線を私に戻した。彼の綺麗な瞳に、私が映って不思議な気分になる。
私の足元にうずくまったモノズが、大きな欠伸をしたのと同時くらいに、N君はクチから言葉を紡いだ。

「ボクと、友達になってくれないかな。」



初めての友達
(私でよかったら、喜んで!)



10/09/25


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