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アポロは部屋に入った瞬間、今まで自分が居た廊下との温度差に驚いた。
そしてクーラーがフル稼働する音が耳にして、その温度差の理由とこの空間を作った犯人を察する。

「おかえりアポロ!」
「リゼ……」

リゼと呼ばれた女は、暢気に紅茶を飲んでいた。以前、アテナから(もちろん私宛に)貰った高級クッキーを微塵の遠慮も感じさせずに齧るその顔は、見ているだけで殺意に似た何かを沸かせる。

「……そのクッキー高かったのだそうですよ。」
「へぇ、だから美味しかったんだ! ねぇ、もうないの?」
「その口ぶりから伺うに、私の分は無いのでしょうか。」
「無いよ? アポロのお菓子は私のお菓子、私のお菓子は私のお菓子だもん」

親指を立てて、ポーズを決めるその細い腕を今すぐ圧し折ってやりたい。そんな衝動に駆られながらも、あれは自分の彼女なんだと理性を働かせ、なんとか冷静さを保つ。

しかし、それにしても寒い。寒すぎる。
捲くっていた長袖の袖を伸ばしながら、クーラーのリモコンに内装されている温度計を見る。

19度
……確か、食堂の横にかけてあった温度計は33度だったはず。



不意に彼女がくしゃみを1つした、くしゅん。

「うー寒寒!」

そう言いながら、リゼは私のベットから掛け布団をソファーまで持ってきて、あたまからすっぽり被った。白い掛け布団を被る姿はまるで、

「てるてる坊主みたいですね。」
「坊主って何。私女の子なんだけど。」
「寒いなら設定温度を上げれば良いではないですか」
「んー」
「大体、ロケット団も資金不足なんですよ。節約しなさい。」
「アポロは、」

布団を被ったまま此方を見上げて、リゼは口を開いた。

「何です?」

私の質問には答えないまま、リゼはテーブルにあった紅茶に手をつけた。
置きっぱなしになっていた紅茶はもうすっかり冷えていたのだろう。
嫌そうな顔をした彼女は、布団を引きずりながら、何の躊躇いも無く流しに向かって紅茶を捨ててしまった。

(あの紅茶の葉も高かった筈なんですけどね)

ソファーの上に戻ったリゼは、更にキツク体に布団を密着させて、再び口から言葉を吐き出した。

「アポロは分かってないよ。クーラーガンガンで、布団に包まったら、すっごくすっごくすっごくすっごくすっっっっっごく気持ち良いんだよ?」
「ほう」

彼女の座るソファーへと早足で歩いた私は、勢い良く彼女から布団の端を奪い取った。次いで服にも手をかける。

「私もキモチヨクなりたいです、リゼ」



堪忍袋の緒が切れました
(うわ、ちょ、寒い!)
(寒いなら温め合えば良いでしょう?)



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