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アーティは朝に弱い。毎朝、世話好きなハハコモリに手を引かれてリビングに出てくるのを見ると、ポケモンの主人の風格は何処へ、まるで子供のようだ。
いや、彼の精神はまだ子供なのかもしれないが・・・それにしてもグズグズと寝起きの機嫌が悪い日には扱いに困ってしまう。
けれどそれでも、恋人の立場である私がそれを投げ出すなんて持っての他。それをひっくるめて彼を好いているのだから。

そんな私の日課はこうだ。

まず朝はマメパトの目覚まし時計で起床する。隣でぐっすり寝ているアーティはマメパトの目覚まし如きでは起きない事はもう分かりきっている。(本人曰く、マメパトの鳴声が聞こえないそうだ。)
そして着替え、洗顔歯磨き、仕事の支度と一通り済ませた後に朝食の調理を始める。

いつもはこの時くらいにハハコモリを初め、彼の虫ポケモンが起きて来始めるのだ。
戸棚に仕舞っているポケモンフーズをあげると、彼等は喜んで食べてくれる。それも朝の楽しみの一つである。

「おいしいー?」
「キュー!」

彼と付き合い始めた頃は、この虫ポケモン達が怖くて怖くて仕方がなかったのだけれども、今じゃそんな事も慣れっこだ。人間って素晴らしい、慣れって怖い。

トーストから良い匂いが漂い始めたらハハコモリの出番だ。
トテトテと寝室に向かって歩いていく姿はまるで、朝寝坊のわが子を起こしに行く母親のようだ。まあ、ハハコモリは♂だから母親というのは違うかもしれない。・・・そもそもアーティは人の子であってハハコモリの子供ではないのだけれど。



「あうう〜」
「おはよ、アーティ」
「リゼ・・・おはよう・・・」

グシグシと目をこすって何とか重い瞼を持ち上げようとするアーティと、テーブルにキッチリ座らせるハハコモリの姿に、毎朝の事ながら思わず笑ってしまった。「お疲れ、ハハコモリ。」そう声を描けると彼女・・・いや彼は満足気な表情を浮かべて他の虫ポケモンの所に戯れに行ってしまった。

目の前の恋人に目を向けると、今日も酷い寝癖だった。

「また髪乾かさずに寝たでしょ」
「ん?・・・ああ、昨日は遅くまで絵を描いてて・・・眠くなっちゃったからシャワー浴びて、すぐ寝ちゃった」
「・・・」

ハァ。大袈裟にため息をつくと彼はごめんね。と笑った。表情と言葉が一致していないのがまた彼らしいというか・・・。



朝食を食べ終わったアーティと私は片付けを手早く済ませると、洗面所へ直行。彼のはねた髪に寝癖直しの液体スプレーと櫛を交互にかけること数分、やっと落ち着いたクセっ毛を丁寧に乾かして終わり。鏡に目をやると、そこにはいつものアーティが居た。

「いつも悪いねぇ」
「悪いと思うならちゃんと乾かして寝てね。」
「あう」



仕事の準備をする彼を横に、私もそろそろ仕事に出なければならない時間になった。仕事に持っていく鞄を手に玄関に行くと、廊下から彼がひょっこり顔を出した。

「行ってらっしゃい」
「行って来ます。アーティもジムとか絵とか頑張って。」
「うん・・・あ、今日ヒウンアイス買ってこれたら買ってくるからね」
「あ、ありがとう。じゃ、戸締りとかちゃんとするんだよ・・・まあハハコモリ達がついてるから心配ないとは思うけど・・・」

正面を向いて、ドアに手をかけるとすぐ後ろから「まって」との声。まだ何かあるのだろうかと振り向いた私の唇に、柔らかい彼の唇が重なるのは数秒後の出来事。



私と彼の朝
(行ってらっしゃいのチュ。)
(・・・これじゃ、アーティが奥さんみたいじゃない)



10/10/26


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