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肌寒くなると、どうしても人のぬくもりが恋しくなるよね。などとぬかして僕の隣に君はやってくる。確かに君は暖かいかもしれないが、僕にとっては冷たいものがくっついてくるのだから、寒い時期にはくっついてこないで欲しい。春夏秋は、此方からくっつこうとしてもひょいひょいと逃げていくのに。なんと気まぐれな奴であろうか。
まるで猫を飼っている気分だ。ゴロゴロと喉を鳴らしそうな顔をして、リゼは僕の腕に頬を擦り付ける。

マツバは眉を下げた。

「読書の邪魔になるんだけど。」
「えええーいいじゃんちょっとくらい」
「・・・」
「だめなの?」

リゼに見上げられて、マツバは思わず目をそらした。

「あれ、マツバほっぺ赤いよ」
「気のせいだよ」

(そんな目で僕を見ないでくれ。反則)
胸の辺りが通常とは異なる感覚になるのを、彼は感じた。

「リゼ」
「ん?なあにー?」
「・・・好き、なんだけど」
「え?なに?聞こえなーい」
「・・・。」

いっつもそうだ。

彼女は自分勝手なのだ。自分の思いを知っていながら、知らないフリをする。気付かないフリをするならばと意を決して伝えてみるたびに、リゼは恋愛小説の主人公のように耳が遠くなるらしい。困った女だ。
男の子と街を歩いてるのを、この間ハヤトやミナキ、アカネも目にしたそうだ。
3人とも、口に出す相手の男の特徴は異なった。きっと、彼女には3人どころかもっともっと、言い寄ってくる男がいるに違いない。僕もそのうちの一人。

「・・・デートすらしてくれないのかい?」
「こうやって遊んであげてるじゃん。」
「じゃあコレはデートなのかい?」
「うーん・・・微妙」

どうやらリゼには男として見られていないらしい。マツバは大きく溜息をついた。家の中だというのに、息は白く色づいた。それを見て、リゼは笑った。

「あはは。息白ー」
「本当に寒いね。暖房入れるかい」
「うん、おねがい」

ちょっと待ってて、と言って、マツバはリゼから離れた。その瞬間、今まで彼女が触れていた部分に、冷たい空気が触れて、思わず彼は口に出した。「寒い」

「ふふん」
「何、そのしたり顔。」
「さっきくっついた時、マツバ嫌そうな顔してたからさ。こいつつめてーみたいな!」

でもね、今、私と離れてマツバ寒いって思ったでしょ。気付かないうちに。私のこと必要だと思ったでしょ。へへ、それが面白かった!いたずらな笑顔を浮かべるリゼ。僕は返事をせずにリモコンの置いてあるテーブルへと歩いた。



最初は迷惑だったんだ。彼女の存在なんて。なのに、いつの間にか、僕にとって大切なぬくもりになってて、離れたくないなんて思わせて。

ピッと音を立てて、暖房が稼動し始める。それを確認してリゼの隣に帰る。
そしていつのまにか寝転がっているリゼの隣に、自然な流れで自分も同じように寝そべろうと、床に膝をついた瞬間、彼女はゴロンと寝返りをうった。マツバとリゼの間に、少しの隙間が出来る。

「・・・どうしてそういうことするかなぁ」
「んー、だって、部屋暖かくなるんでしょ?」

ニッコリ笑って彼女はポケギアをいじり始めた。
ようやくこっちから歩み寄ろうと決意した瞬間に、リゼは何処かへ行ってしまう。いつものことだ。いつものことなのに。彼女との間にあるこのスペースが、いつもより哀しく感じた。



温度平衡
僕は熱くて君は冷たくて
くっついたら、きっと丁度いい温度なのに



12/12/09


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