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「ラーンスッ!」

耳に溶け込む声。後ろから伸びてくる白い手。仄かに香る甘い匂い。即座にランスは、これは自分の彼女のものだと判断して、ゆっくりと振り向いた。

と、

パチンッ!!

自分の部屋いっぱいに響く音。ジンジンと熱を持って痛む左頬。
(ああもう!・・・、またですか!!)
ランスは彼女の右腕を力いっぱいに握った。

「いてて、何すんの離してよ」
「何すんのはこっちの台詞ですよ。またビンタしましたね、貴女。」
「だってぇーランスの白い肌が赤く染まるの、とってもとっても綺麗なんだもん!」

悪びれる様子も無く、自由な左手で私の左頬をなぞるリゼ。

「DVですか。」
「えーっ!? そんな事無い! だってランス、昨日あれだけ私の事虐めて楽しんでたじゃない。これでチャラでしょ!」

(ムカツク、仮にも彼女はしたっぱで、私は彼女の上司のはずなのに。)

明らかに不機嫌そうに眉間に皺を寄せるランスの顔を見て、リゼは「綺麗な顔が台無しだよ!」と笑った。

「ランス。好き、好き。世界で、宇宙で1番誰よりも好き。」

ギュム、と私の胸に顔をうずめるリゼは、何処からどう見ても頬に平手打ちをするような女には見えない。あれは何かの夢だったのだ。そんな錯覚にランスを陥れる。

「……私も好きですよ、宇宙で1番。誰よりもです。」
「へへー、両思い!嬉しいなッ!」
「ヘラヘラ笑わないで下さい、不快です。」
「なん、」

そんなヘラヘラとした笑顔を崩すべく、ランスはすぐさま彼女の唇に、自分のソレを重ねた。一瞬驚いた表情を浮かべたリゼだったが、それは数秒後にうっとりとした顔に変わり、簡単にランスの舌を受け入れた。

「ふ、ぅ……んっ!」

彼女の甘い声が自然に口から漏れる。
「やってやった!」ランスがそう確信し、油断した瞬間、

彼女の仕返しはやって来た。

「ッ!?」

舌先に感じる一瞬の痛みに、慌ててキスを中断すると、自分の口の中に鉄の味が広がった。目の前には、すこし頬を染めた彼女がニッコリと笑顔を浮かべていた。

(今度は舌を噛みましたね……!!)

キッ!と鋭い視線を彼女へ向けると、リゼはきょとんとした顔で口を開いた。

「だってランスのちゅーがあんまりにも気持ちがいいから。何だか舌を噛み切りたくなったんだもん。」

はぁ。大袈裟にため息を吐くランスの胸に顔を埋め、グリグリと再び彼女は甘えだした。

「ランス好きーッ!」
「舌噛んだと思ったら……貴女の思考はどうなってるんですか?」



全く以て理解不能!
(いつか、自分の事を愛しすぎたリゼに殺されてしまうかもしれない)
(何故だろう。それでもいいと思ってしまうのは)



「痛くない愛が欲しいものです。」
「そんなこと、心にも思って無いくせにー」
「本気で殴りますよ」

自分に、彼女に、イライラして。彼は再び大きなため息を吐いた。



10/03/27
10/06/13


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