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ロケット団は、鬼か福かと言えば鬼の方だろう。
その鬼たちがみんなそろって豆をばら撒いている。何て滑稽な景色だろうか。

「鬼は外! 福は内!」
「レッドは外! サカキ様は内!」
「お前言い事言うじゃねーか!」
「レッドは外!! サカキ様は内!!」

しかも鬼福関係なくなってるし。
配給された豆を口に放り込みながらその様子を眺める。

「リゼ」
「あっランス様」

急に後ろから肩を叩かれ名前を呼ばれたと思えば、上司兼、恋人のランス様が居るではないか。

「貴女は豆を撒かないのですか?」
「ええ、食べる専門です。」
「そうですか。……ああ、なら私の部屋で恵方巻きでも食べませんか」
「本当ですか!?」

丁度貰った豆も全部平らげたところだし、いつの間にか白熱した豆の投げ合いに巻き込まれるのも嫌だ。私は仕事の用以外では未だ入った事の無い、ランス様のお部屋にお邪魔させてもらう事にした。



「はい、どうぞ」
「ありがとうございますー」
「確か今年は西南西でしたね。」
「そうなんですか?」
「ええ。」

じゃあ、いただきます!と口にほおばろうとした時、ランスさんの厳しい口調の声が響いた。

「いいですか、食べてる途中は喋らないように!!!!」

分かってますよ、ランスさん。結構そういうの気にする人なんだ。
心の中で返事をして、西南西のほうを向きながら恵方巻きを口にほおばる。うーん、美味しい。えっと、お願い事しながら食べるんだっけ?サカキ様が今年こそ帰ってきますように。あともう一つ――ランスさんとこれからもうまく行きますように。

もぐもぐ、もぐもぐ。
無言な所為か、ただでさえ広い部屋がもっと広い気がした。

ごっくん。
恵方巻きを全て平らげて、ランスさんを見ると、まだ半分も残っている。食べるの遅い。それとも、私が早すぎたのか。



しっかり西南西の方を向いて一生懸命恵方巻を食べるランス様をみていると、悪戯心がムクムクと大きくなる。これ、もしかするとチャンスかも。

「ラーンス様!」
「……」
「えい」
「っ!?」

わき腹に手を伸ばしてくすぐる。ランス様は身をよじろいだ。おお、弱点発見。
今ならランス様は声を出せないし、西南西以外を向く事は出来ない! いや、向こうと思えば向けるけど、ランス様はそういうとこキッチリするお方だと分かったから大丈夫。
ランス様苦しそう。冷酷じゃない表情、私以外には見せないで居て欲しいなあ。なーんて。

調子に乗ってくすぐり続けると。ガッと手をつかまれた。次いで上方から「リゼ」の声。

「あっランス、様……食べ終わったんですね、はは」

いつの間にか恵方巻きは全てランス様のお腹の中に。食べてればいつか食べ終わるのは当たり前なのだけれど。口の横についているご飯粒を見るところ、ものすごく急いで食べたらしい。
ランス様の表情を見る。笑顔と怒りの混ざった複雑な表情。ちょっとまずいかも知れない。

「よくもやってくれましたね」
「ちょ、ちょっと待ってくださいランス様……ちょっとした悪戯心で、て、どこ触って」

ランス様のやたらでかいベットにひこずられる様に連れて行かれる。
イタズラなんてしなきゃよかった。そう思う私の耳元で、ランス様は囁いた。



悪戯にはお仕置きを
(ごめんなさい、もう二度と貴方に悪戯はしません)



10/02/03
10/06/13


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