※正月ネタ
「マツバさん!!勝負してください!!」
新年早々やってくる挑戦者に心の中で舌打ちをする。
これで何人目だろう。連戦で疲れきった僕とゴーストポケモン達を、彼らは休ませる気はないのだろうか。
「ちぇー、折角神様に今度こそ勝てますようにって頼んできたのにー」
モンスターボールを大切そうに両手で持って少年は呟いた。そういうものは神頼みするべきじゃないだろう。そして頼むから君は4日に1日の頻度で来るのだけは、やめて欲しい。
「もうすこし強くなってからまたおいで。」
そう声をかけると少年は「はーい!」とニッコリ笑った。その笑う様子は4日前にも見た。次もきっと4日後くらいに来るのだろう。
「じゃ、俺コイツをポケモンセンターに連れてくので!!」
そういって少年は走ってジムから出て行った。
「神様にお願い……か。」
そういえば今年は初詣に行ってないと思い出す。もう出店は出てないだろうけど、行ってみるだけ行ってみようかな。
気分転換に、ジムの外に出ることにする。留守中にまた挑戦者が来ないといいけど。
ジムを出た僕の足は、神社とは逆の方向の、とある家へと向かっていた。
「あ!マツバさん!!」
「リゼちゃん」
呼び鈴を鳴らして出てきた彼女は、僕を見るなり駆け足で近付いてきた。
「なんだか久しぶりな気がします。」
「年が明けてから、会ってないからね。」
「……やっぱりジムが忙しいんですか?大丈夫ですか?」
心配そうに僕の顔を見つめる彼女に「大丈夫だよ」と笑いかけた。
「それより、僕と一緒に出かけないかい?」
「お出かけですか?」
「いや、お出かけっていうよりは……初詣かな。」
僕の発言にリゼちゃんはくりくりした目をさらに大きくあけて吃驚した様子だった。
「ええっ!?初詣行ってなかったんですか!!」
そんなに忙しかったのか……と呟いたリゼちゃんは、直後に「いいですよ!すぐ準備してきます!」と笑顔になった。
がらんとした神社は、世間的に正月が既に終わってしまっている事を物語っていた。
「わぁ、静かですね!!」
年が明けた直後は人で一杯だったんですよ!と彼女は手を大きく広げた。
「こーんなに!!」
「へぇ、そうなんだ。」
「はい、でも私は今の方がいいです!」
人ごみはあまり好きじゃないし、それにマツバさんと一緒なので! そう言って彼女は僕の手を握った。
温かくて軟らかい白い手の感触に一瞬ドキッとしたけれど、ゆっくり握り返した。
「そうだね、僕も今の方がいいかな。」
リゼちゃんは少し頬を赤らめながら、境内の隣を指差した。
「あそこがおみくじ売り場なんです!前行った時は混んでて買えなかったんですけどね」
「じゃぁお参りが済んだら行って見るかい?」
僕の問いかけに彼女は「ハイ!」と白い息と一緒に肯定の2文字を口から吐き出した。
賽銭箱に500円を投げ入れると、リゼちゃんは「えっ!」と吃驚した表情になった。
「そんなに入れちゃうんですか・・・??」
「う、うん……?」
「私毎年5円です……。」
別に金額がお願いと関係する訳でもないしなー、と思いながら僕は彼女の頭を撫でた。
「大事なのは気持ちだよ」
「……気持ちですか」
うーん、と一瞬悩んだ彼女は、突然鞄からサイフを取り出し、お金を賽銭箱に投げ入れた。
「じゃぁ私もう一度お願いします!」
そういって彼女は目をつぶり、両手を顔の前で合わせた。
「えーと、えーと……やっぱりマツバさんが今年1年幸せでありますように」
小声で呟く彼女の表情はとても可愛くて、どんなお願いをしようかと考えあぐねていた僕の願いも決まった。
今年も彼女の笑顔が絶えることがありませんように。
「次はおみくじですね!!」
ウキウキとした表情で彼女は私の手を引いた。
よっぽどおみくじを引きたかったんだろう。
「どれにしようかなぁ〜」
おみくじが一杯入った箱からどれを取り出そうか迷っている彼女は、やっとコレだ!というおみくじを手に取った。
「じゃ、僕はコレで」
リゼちゃんが最後まで悩んでいた2つのうち、もう1つを手にとって、お金を別の箱に入れた。
「じゃあ、2人で一斉に開きましょう!!」
「リゼちゃん、その前に1度目を閉じて?」
「? はい。」
せーの、と言う彼女を静止させると、言われたとおり素直に目を閉じた。
彼女の手を取って、白い頬に軽くキスをする。
吃驚したように目を開けた彼女の頬は、既に白ではなく桃色に染まっていた。
「ななななにするんですか!」
「リゼちゃんが可愛いからだよ」
「なんですか、も、もーいいです、じゃあ今度こそ開きますよ?」
餅のように膨れ上がった頬をしぼませ、再びウキウキと目を輝かせて、彼女はおみくじを開いた。
「わあ……大吉だ!!」
おみくじを眺めるリゼちゃんの表情は、この上なく幸せそうだった。
「良かったね。」
「マツバさんのおみくじの結果はどうでした?」
僕のおみくじを覗き込んだリゼちゃんは「……末吉ですか。」と微妙な顔をした。
「やっぱり私の引いた方のが良かったんですねー」
「そうだね、良い事たくさんあるといいね」
僕の言葉に彼女は、早速もうあったんですけどね。と早口な小声で言った。
「大吉の私が、末吉のマツバさんを今年は守ってあげますね!!」
「はは、それは嬉しいな。」
僕達はもう一度手を繋いで鳥居をくぐった。
繋いでいないもう一つの手に、最初に彼女が引いたおみくじを持って。
2人きりの初詣
(末吉のほうも恋愛運は好調みたいだ)
10/01/21
10/06/13
「マツバさん!!勝負してください!!」
新年早々やってくる挑戦者に心の中で舌打ちをする。
これで何人目だろう。連戦で疲れきった僕とゴーストポケモン達を、彼らは休ませる気はないのだろうか。
「ちぇー、折角神様に今度こそ勝てますようにって頼んできたのにー」
モンスターボールを大切そうに両手で持って少年は呟いた。そういうものは神頼みするべきじゃないだろう。そして頼むから君は4日に1日の頻度で来るのだけは、やめて欲しい。
「もうすこし強くなってからまたおいで。」
そう声をかけると少年は「はーい!」とニッコリ笑った。その笑う様子は4日前にも見た。次もきっと4日後くらいに来るのだろう。
「じゃ、俺コイツをポケモンセンターに連れてくので!!」
そういって少年は走ってジムから出て行った。
「神様にお願い……か。」
そういえば今年は初詣に行ってないと思い出す。もう出店は出てないだろうけど、行ってみるだけ行ってみようかな。
気分転換に、ジムの外に出ることにする。留守中にまた挑戦者が来ないといいけど。
ジムを出た僕の足は、神社とは逆の方向の、とある家へと向かっていた。
「あ!マツバさん!!」
「リゼちゃん」
呼び鈴を鳴らして出てきた彼女は、僕を見るなり駆け足で近付いてきた。
「なんだか久しぶりな気がします。」
「年が明けてから、会ってないからね。」
「……やっぱりジムが忙しいんですか?大丈夫ですか?」
心配そうに僕の顔を見つめる彼女に「大丈夫だよ」と笑いかけた。
「それより、僕と一緒に出かけないかい?」
「お出かけですか?」
「いや、お出かけっていうよりは……初詣かな。」
僕の発言にリゼちゃんはくりくりした目をさらに大きくあけて吃驚した様子だった。
「ええっ!?初詣行ってなかったんですか!!」
そんなに忙しかったのか……と呟いたリゼちゃんは、直後に「いいですよ!すぐ準備してきます!」と笑顔になった。
がらんとした神社は、世間的に正月が既に終わってしまっている事を物語っていた。
「わぁ、静かですね!!」
年が明けた直後は人で一杯だったんですよ!と彼女は手を大きく広げた。
「こーんなに!!」
「へぇ、そうなんだ。」
「はい、でも私は今の方がいいです!」
人ごみはあまり好きじゃないし、それにマツバさんと一緒なので! そう言って彼女は僕の手を握った。
温かくて軟らかい白い手の感触に一瞬ドキッとしたけれど、ゆっくり握り返した。
「そうだね、僕も今の方がいいかな。」
リゼちゃんは少し頬を赤らめながら、境内の隣を指差した。
「あそこがおみくじ売り場なんです!前行った時は混んでて買えなかったんですけどね」
「じゃぁお参りが済んだら行って見るかい?」
僕の問いかけに彼女は「ハイ!」と白い息と一緒に肯定の2文字を口から吐き出した。
賽銭箱に500円を投げ入れると、リゼちゃんは「えっ!」と吃驚した表情になった。
「そんなに入れちゃうんですか・・・??」
「う、うん……?」
「私毎年5円です……。」
別に金額がお願いと関係する訳でもないしなー、と思いながら僕は彼女の頭を撫でた。
「大事なのは気持ちだよ」
「……気持ちですか」
うーん、と一瞬悩んだ彼女は、突然鞄からサイフを取り出し、お金を賽銭箱に投げ入れた。
「じゃぁ私もう一度お願いします!」
そういって彼女は目をつぶり、両手を顔の前で合わせた。
「えーと、えーと……やっぱりマツバさんが今年1年幸せでありますように」
小声で呟く彼女の表情はとても可愛くて、どんなお願いをしようかと考えあぐねていた僕の願いも決まった。
今年も彼女の笑顔が絶えることがありませんように。
「次はおみくじですね!!」
ウキウキとした表情で彼女は私の手を引いた。
よっぽどおみくじを引きたかったんだろう。
「どれにしようかなぁ〜」
おみくじが一杯入った箱からどれを取り出そうか迷っている彼女は、やっとコレだ!というおみくじを手に取った。
「じゃ、僕はコレで」
リゼちゃんが最後まで悩んでいた2つのうち、もう1つを手にとって、お金を別の箱に入れた。
「じゃあ、2人で一斉に開きましょう!!」
「リゼちゃん、その前に1度目を閉じて?」
「? はい。」
せーの、と言う彼女を静止させると、言われたとおり素直に目を閉じた。
彼女の手を取って、白い頬に軽くキスをする。
吃驚したように目を開けた彼女の頬は、既に白ではなく桃色に染まっていた。
「ななななにするんですか!」
「リゼちゃんが可愛いからだよ」
「なんですか、も、もーいいです、じゃあ今度こそ開きますよ?」
餅のように膨れ上がった頬をしぼませ、再びウキウキと目を輝かせて、彼女はおみくじを開いた。
「わあ……大吉だ!!」
おみくじを眺めるリゼちゃんの表情は、この上なく幸せそうだった。
「良かったね。」
「マツバさんのおみくじの結果はどうでした?」
僕のおみくじを覗き込んだリゼちゃんは「……末吉ですか。」と微妙な顔をした。
「やっぱり私の引いた方のが良かったんですねー」
「そうだね、良い事たくさんあるといいね」
僕の言葉に彼女は、早速もうあったんですけどね。と早口な小声で言った。
「大吉の私が、末吉のマツバさんを今年は守ってあげますね!!」
「はは、それは嬉しいな。」
僕達はもう一度手を繋いで鳥居をくぐった。
繋いでいないもう一つの手に、最初に彼女が引いたおみくじを持って。
2人きりの初詣
(末吉のほうも恋愛運は好調みたいだ)
10/01/21
10/06/13