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コンコンッ

「し、失礼しまーす・・・。」

キィ、と控えめにドアを開けながら部屋の中に入る。
ここがきっとラムダ様の部屋だったらバァン!と開けてラムダ様に飛びついて怒られる流れなんだけど。でもここはラムダ様の部屋じゃない、何と言ってもあのアポロ様のお部屋なのだ!!

うわ・・・絨毯軟らかい・・・!!

ブーツの下の感触に気をとられていると、目の前の机に座っていたアポロ様が「リゼ」と声をかけた。

「アポロ様・・・いえ、違うんですよ!別に絨毯が柔らかかったとかそういうんでは・・・あ、いや絨毯は柔らかかったんですが・・・」
「絨毯の議論をするために私は貴方をココに呼んだのではありませんよ」
「はい、そうですよね・・・。」

ああ、そういえばアポロ様とまともに対面したことなんて一回もないっけ。同僚の友達も呼び出される私にいいなぁーって言ってたし・・・。でもあたし、最初の会話から真面目な話してないや。同僚よむしろ代わってください。

「この報告書の事です。」

ピラ。とアポロ様が見せて下さった報告書は、私が昨日提出した報告書だった。
いままではラムダさんに提出だからちゃちゃっと書いてたけど(いや、一応真面目にはしてる)
現ロケット団のボス、そして憧れのアポロ様直々に提出する書類に抜かりなんてあるわけが無い。いや、張り切りすぎておかしいトコがあったのかな。

「この・・・報告書が・・・どうかしましたか?」

書類を渡される時にかすかに指が当たって、内心キャー!!ってなったけど顔には出さずにアポロ様の顔色を伺った。

「字が・・・。」
「字が・・・なんでしょう・・・?」
「読めないんです。」

決して汚い訳ではないですよ。とアポロ様は付け足して困ったように笑われた。

確かに、浮かれていつもの調子で字を書いてしまったかもしれない・・・!!
報告書に視線を移すと、やっぱりそうだ。現代の女の子が書く字そのもの。
入団当時ラムダ様に「読める字で書けよ!ギャル文字なんてのは禁止だからな!」と言われた記憶さえあるのに!!!
これならいつもみたいにラムダ様に提出するような気分で書くんだった・・・!!

「リゼ?」

ハッと前を向くと、腕を組んだアポロ様が私の顔をジッと見つめていた。

「あ、えっと・・・すみません!!すぐに直します・・・!!」

あわわわわアポロ様そんなに私の顔を見ないで・・・!!
顔から火が出るんじゃないかと思うぐらい真っ赤になっただろう私の顔を、アポロ様は・・・楽しそうに眺めている気がした。

「面白い子ですね、リゼは。」

頬に手をそっとやられ、ヒンヤリした指先に思わずピクッと身体が身震いした。
細くて白く透きとおったようにお綺麗な手を、たかがしたっぱが払いのけるなんて絶対無理!!
そう瞬時に計算した私はアポロ様の顔を見つめることにした。

「アポロ様」
「何です?」
「えーっと・・・楽しいですか?私のほっぺなんて触って・・・」
「結構気持ちのいいものですよ?」

気持ちいいってなに!?
その言葉にますます体温が急上昇して、思わず眩暈がした。バランスを崩す私を「おっと」の一言と一本の腕で支えて下さったアポロ様は
「兎に角、今日中に再提出をお願いしますね?」とにこやかに笑った。



逃げるように自分の部屋に戻った私を迎えてくれた同じ部屋の同僚に、さっきあったことを話すと、腹を抱えて笑いやがった。もちろんほっぺとか眩暈とか、そういう話はしてないけど。

「ちょっと笑いすぎよアンタ!」
「だ、だって・・・!!あのアポロ様に『字が読めません』って・・・!!!リゼ最高!!」
「そんなの誉められても嬉しくない!!」

もういい、と彼女に背を向けて、返って来た報告書の書き直しを始めた。
あー、私もランス様みたいに綺麗な字が書ければいいのに。



コンコンッ

「失礼します・・・。」

本日2回目のアポロ様のお部屋は、良い紅茶のにおいがした。思わず口から、わあ良い香りなどと漏らしてしまった私を見て、紅茶を飲んでいたアポロ様がクックッと喉を鳴らして笑った。

「報告書の再提出に来ました」
「ご苦労様です、貴方も飲みますか?リゼ。」
「い、いえ!!そんな滅相も無い!!」
「そうですか・・・残念です、折角貴方が来ると思って紅茶をいれていたところなんですけれど」

残念そうにテーブルに置かれたもう一つのティーカップを見つめるアポロ様に「飲みます!!!」と手を上げて言うと、にこやかに渡してくれた。
わーまた手が当たっちゃったよ!!キャーキャー!! 心の中で叫びながら紅茶を口に含むと、ふわっと口いっぱいに香りが広がった。

「美味しいです!!!」
「それは良かった」

私の報告書を見つめながら、アポロ様はそう言った。



「・・・・・・・ふむ、まぁこの字なら良いでしょう。」

女性の書く字は難しいですね、と笑ったアポロ様のお顔はとても綺麗でした。

「良かった、です。」
「リゼ」
「はい!?」
「綺麗な字で書かないと、特にラブレター等を書く時なんかは気持ちを受け取ってもらえませんよ」

真面目な顔で「らぶれたー」という単語を言い放ったアポロ様に、思わず顔が綻んだ。

「そうですね、すみません・・・でも私まだ書く相手居ませんし・・・」

うーん・・・別に今のままの字でも大丈夫だと思うんだけど、なんて今アポロ様の部屋にいる理由を頭の墨に追いやっている私の様子を見て

「・・・そうですか、ならば私からのお手本です。」

気がつくと彼の手には真っ白な封筒が乗っていて、それを此方に差し出した。

「・・・えっと、コレは誰宛でしょうか?」
「勿論貴方宛ですよ。」
「お手本のラブレターですか!?」
「実践を兼ねた方が字の大切さが良く分かりますよ」

綺麗な字で返事を下さいね、とアポロ様は付け足して微笑んだ。



お手本ラブレター
(ランスさん!「は」と「い」の上手な書き方 今すぐ教えてくださーい!)
(その前に貴方はノックしてから入るというマナーを学んだらどうですか?)



10/02/01
10/06/13


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