Pkmn | ナノ

Top | 06/02 | Main | Clap



ざあ、ざあ。
土砂降りの中、公園の遊具の下で雨宿りをする学生のカップル。女の子の方が、雨でくるんとはねた髪を鬱陶しそうに触りながらため息を吐いた。

「最悪・・・何で雨なんか降るかなー。」

激しい雨の音にかき消されそうになるくらいの小さい声だったが、男の方、マツバはきちんとその言葉を拾った。

「仕方ないだろ。降っちゃったものはさ、」
「ええ?そんなの可哀想だよ」
「誰が?」
「織姫様。」

―――オリヒメサマ?
マツバは心の中で突然出てきた単語を何度も何度も復唱する。……ああ、織姫様と彦星様の織姫様か。

そういえば今日は七夕だったなと、先ほど街中に飾られた短冊を思い出した。
「私も書きたい!」なんてリゼが言い出すものだから、高校生にもなりながら短冊に願い事を書いてしまった。
高校生にもなって。思い出すだけで恥ずかしい。

――リゼの願い事が可愛かったから良しとしよう。

照れながら慌てて短冊を隠すリゼの姿を思い出しながらクス、と笑うと、隣の彼女は不思議そうな顔をした。

「何で可哀想なんだ」
「だって、雨降っちゃったら織姫様と彦星様、会えないじゃん・・・」

目を伏せて、小さな声で「1年に1回しか会えないのに・・・」と付け足す彼女。マツバはそんな彼女の姿を見て、そして黒い雲で覆われた空を見上げた。

さあ、さあ。

一向に止む気配のない雨。
時計で時間を確認すると8時を過ぎていた。けれどこれでは天の川なんて見えるわけが無い。

「けどさ」
「ん?」
「いや、」

黒い雲を見つめたまま、マツバは口を開いた。「わざとだったりして?」

「へ?」

きょとんとした顔に視線を移して彼は笑った。

「雨が降ったら雲で天の川が見えないだろ?」
「うん。」

リゼが、「だからどうしたの、」と言葉を発しようとした瞬間、
その言葉は彼の口の中へと消えていった。

「・・・と、まあ、こ、こういう恥ずかしい事だって出来る訳だ。地上の俺等からは見えないからな」
「な、ばっ、えっ!?」

顔を真っ赤にして動揺を隠せないリゼに、内心可愛いななんて柄にも無いことを思った。

「1年に1度しか会えないんだ、織姫や彦星も溜まってるんじゃない?イロイロと。」
「マツバの所為で・・・せ、折角のロマンチックな話が台無しだよ・・・」
「ははは、ロマンチックなの大好きだよな。短冊に『マツバといつまでも仲良くいられます様に』って書いてたくらいだし」
「それは言わないでよ!!」



雨降りのワケ
宇宙に雨なんて降らないしね?きっとそういう事。



10/07/07

[ back ]


[ BACK ]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -