第16話 「隠さなくていいから」


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side:増田



手越と叶歌は今頃補講かぁ。


やっぱり帰りを待っていればよかった。



寂しいひとりぼっちの帰り道。



すると、

「まっすーーー!」



後ろから俺を呼ぶ声がする。



「ま、間に合ったぁ....はぁ...」

「叶歌!」


「一緒に、帰ろ……」


「...手越は?」

「寄り道するからって、さっき別れた」


もう日も暮れてるのに、
どこに寄り道してるのだろう。


そんなことより、

「...っ、病み上がりなんだから、走るな」


片手で叶歌の頭を ぽんっと叩く。



「最近一緒に帰れてなかったから...」

どうしても帰りたくて、と彼女は言う。


こんな可愛いことを真面目に言うから、こっちが照れくさくなる。



「家まで送る」

「えっ」

「はぁ、彼氏なんだからそれくらいさせて」


欲しがるくせに、どこまでもお人好し。

人のこと言えないけど
この子も相当不器用な子だ。



「ま、まっすー」

「ん?」


「保健室で、なにしてたの?」


「なんで?」

「ううん、別に...」


可愛い。
嫉妬だろうか。


「ふぅん?特になにもしてないよ」

「そ、そっか」


安心したように、彼女は笑う。



「叶歌はさ」


「うん?」


「俺のこと好き?」

「え、.....」


いきなりのことで戸惑う彼女。


「いや、別に大した理由はないんだけど」

「あ、そっか....す、好きだよ」


言った後に照れて俯く。


「手越のことは?」

「え...?」


「...手越のこと好きかって聞いてんの」


俺の質問に再び戸惑う叶歌。


多分、自分でもよくわかってないのだろう。



「....」

「.....やっぱいいや、忘れて」



叶歌の本当の気持ちが知りたいのに。

少し踏み込むと 気まずくなってしまう。



「あ、あの」

「ん?」

「まっすーは、わたしのこと嫌いになった?」


「は?」


すぐそうやって自信をなくす。


「そんなわけないだろ」



彼女をそっと抱きしめる。


本当は大好きだし、ずっとそばにいたい。



でも俺は、あの金髪を捨てられなかった。




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side:手越



「ただいま」

「んおー、おかえり」


家に帰るとまっすーがごはんを食べていた。


「遅かったじゃん」

「そ、そうかな...」

「...なに?俺に気遣ってる?」

「な、なんのこと?」


叶歌ちゃんとまっすーを2人きりにするため、俺は無駄に寄り道をして帰ってきた。


でもそんなこと、言う必要ないだろう。


俺はまっすーの向かい側に座る。



「手越さ、」

「うん?なに?」

「もし俺が叶歌と別れたら、どうすんの?」

「はっ、な、何言ってんのまっすー」


ご飯を食べながら、こっちを見ずに聞いてくる。


「いや、なんとなくだけど」

「どうするって、……どうもしないよ」

「ふぅん」


あっそ、と言いながら味噌汁を飲む。


「でも好きなんでしょ?叶歌のこと」

「え、」

「別に隠さなくていいから」


彼はまるで俺の気持ちをすべてわかっているかのように話し続ける。


「...お前、昔のこと気にしてんの?」

「は、別に...」

「ふぅん、まぁいいや」


ごちそうさま、と言うと彼は自分の部屋に向かう。


「あ、ま、まっすー」

「ご飯、手越の分もあるから食べてね」

「え?あ、ありがと...」



一体何が言いたかったのかいまいち掴めずに話は終わってしまった。



まっすーこそ俺に気遣っているのではないか。


いや待てよ。
俺のために別れてしまうなんてことある?



...彼は優しいから、否めない。




一番大事なのは、叶ちゃんの気持ちがどこにあるか だよな。




でも彼氏でもない俺がそんなこと聞くのって、大きなお世話すぎる...。




考えていても仕方ない。




俺はまっすーが用意してくれたご飯を食べて、部屋に戻り、倒れるようにして眠りについた。







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