第15話 「美里ちゃん」

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丸3日寝込んだ。


ちょうど土日だったから、授業はどうにかなりそう。



やっと今日から復帰。



「叶歌おはよう!」

「体は大丈夫?」


学校に着くと、さっそくあかりと美優が声をかけてくれる。



「ありがとう、もう大丈夫」




わたしが着いたあとすぐに、後ろから増田くんと手越くんも到着。



「お、叶歌、もう大丈夫?」

「うん、大丈夫」


「叶ちゃんごめんね、」

「ううん、手越くんのせいじゃないよ」



わたしたち3人の会話を
あかりと美優が険しい表情で見ている。


「?、2人ともどうしたの?」


「え!? ううん、なんでもない」

「久しぶりだなーって思って、」


明らかに怪しい。




すると、先生が教室に入ってくる。


「おー、手越と星野、復帰したか」

「はい」

「お前ら放課後補講あるからな」

「えっ」


休んでた分の授業...?

最悪だ。


手越くんも絶望的な顔をしている。




今日は久しぶりに増田くんと一緒に帰れると思ってたのにな。





ーーーーー



「はぁ、だるいな」


時は流れて放課後、
予定通り手越くんと2人で補講。



先生が来るまで暇だ。



「まっすーと帰りたかった、」


本音をポロッと漏らしてしまう。



「ん?あー、そうだよな」


手越くんが残念そうに言う。



「帰れば?俺言っておいてあげるよ」

「ううん、大丈夫...」


帰ったらまた後日とかになっても困る。




「おう、お待たせ」


やっと先生登場。



「先生、遅いよ」

「うるさいなぁ、仕方ないだろう」


ほら、やるぞ と張り切っている。



「カップルで補講だなんて、ムカつくな」


「「はい!?」」


「なんだ?違うのか?」


「「ちがいます!」」


「はは、息ぴったりだな」



先生は楽しそうにからかってくる。


「叶歌にはねー、優しい彼氏がいるんだよ」

「誰だ?増田か?」


この先生、よく見てるなぁ。


「そういや、さっき保健室にいたな」


「えっ、?」


増田くんが保健室に...?



「増田が彼氏か!取られちゃったな手越ー!」

「先生はうるさいんだよ!」

「図星かー!青春だなー!」



わちゃわちゃ、少し楽しそう。



それよりも、増田くんが気になってしまう。



保健室に行きたい気持ちがこみ上げてくる。



わたしの焦りに気付いたのか、手越くんがヒソヒソと話しかけてきた。


「大丈夫、まっすーはちゃんと叶歌を好きだよ」



「う、うん...」



わたしはずるいな。


わたしだって手越くんと2人でいるのに、
増田くんが他の女の人といたら不安だなんて。



...。

...なにもないと、いいな。




ーーーーー
side:増田




「やっと来てくれた」


保健室に入ると、先生が駆け寄ってくる。


「ごめん、久しぶり」



俺はソファに腰を下ろす。



「好きな子と何かあったのね」



さすが、大人の女性は鋭いな。
高校生の気持ちなんてお見通しか。


「わたしとは、もう遊んでくれないの?」


いつも通り、寄り添ってくる。


「先生、ひとつ聞いていい?」


そんな先生をスルーして、質問をする。


「...なに?」


「好きな人が2人いる場合って、どうしたらいい?」



ふざけているように思えたのか、
聞いた直後は笑われた。


しかし、俺が真剣な顔をしていると、
彼女もまた、真剣な顔つきになる。



「じゃあ、2人とも幸せにしてあげなきゃね」


「...そっか」


実際、めちゃくちゃなことかもしれないが、
今の俺にはその言葉が励みになる。


「その2人の中に、わたしは?」


「入ってないよ」


「そう、」



俺が真剣だからか、珍しくふざけない。



「珍しいね、あなたが真剣に悩んでるって」


「え、」


「今までは、なにやるにも無気力だったのに」


変わったね、と彼女は言う。



「わたしの入る隙はなくなっちゃったのね」



ちょっぴりさみしそうな顔をする。


でも、彼女のおかげでなんとなく決心はできた。



「先生、」


俺はお礼のつもりで、先生の頬にキスをする。


「ありがとう」


そう言って保健室を後にする。



先生は驚いた顔。


しかし、最後にはちゃんと背中を押してくれた。



「がんばってね」




ーーーーー



補講も終わり、急いで保健室へ向かう。


向かったところで、どうしよう。
後のことはなにも考えていない。


「叶ちゃん、行ってどうするの?」


手越くんはなんだかんだ一緒についてきてくれる。



「み、見るだけ」

「なにを見るのさ」



すると、保健室の方から先生が歩いてくる。


「...あら?」

「あ、美里ちゃん!」


保健室の先生の名前は 美里 というらしい。


「手越くん、その呼び方は...」

「まっすー知らない?」

「え?...もう帰ったわよ」

「そっか!だってよ、叶ちゃん」

「ありがとうございます、」



引き返そうとした時、



「星野さん、だっけ?」


保健室の先生に呼ばれる。



「はい!」


勢いよく振り返ると、



「あなたも、しっかりね」



と、強く伝えてくれた。
この前会った時とは雰囲気がまるで違う。


本当はいい人なのかもしれない。




けれど、先生のその言葉の意味は
今のわたしにはよくわからなかった。





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