10月のよく晴れた空の下で、キーアと早苗、そして友千香に七海は午後一番の出番にそなえて機材の準備をしていた。


「白崎さん、マイクは7本に増やすんだよね?」

「あ、ありがとうございます、委員長!」


放送委員長からマイクを受取り、7色のシールを貼っていく。
今日は早乙女学園の文化発表会、いわゆる文化祭というものだ。軽音部からは数チームが出演するものの、この屋外特設ライブ会場のしかも一番良い時間をとれたのはこのメンバーだけだった。


「キーアちゃん!着れましたー、どうですか?似合いますか?」


ぴょこんと跳ねながら、人間に転じた状態の那月が控室から飛び出してきて、軍服をモチーフにつくった衣装を見せてくれる。


「はい、よく似あってます。格好良いですよ」

「ふふっ、キーアちゃんの衣装もとぉーっても可愛いですよ〜」

「ありがとうございます」


早苗たち女子4人は紺色のポロシャツにプリーツスカート、両肩に憲章をつけて各自好きな色の紐が肩からカーテンのように垂れている。そんなライブ用の衣装を作って臨んでいた。


「しかし…このデザインは一体誰が…」

「あ、あたしー!」

「トモチカはデザインのセンスがあるのですね!ファンタスティック!」

「レンのシャツが腹チラする長さなのはわざとか…」

「おチビちゃんには出来ない、大人の色気だね」

「うっさい、ほっとけ!!」


衣装に着替えた人間姿のドールたちが賑やかに舞台袖へと出てきた。早苗たちは、今日、歌わない。


「白崎さんたち、スタンバイお願いします」

「「「「はいっ!」」」」


事前に貼りだされた早苗作のポスターのお陰か。イケメン揃いだったドールたちのお陰か。会場には7色のサイリウムが激しく上下している。
4人と7人はステージへかけ出した。









▼15.夢の終わりに









日曜日。キーアの家を訪れた早苗は大変に驚かされた。というよりも度肝を抜かれた。更に言って良いのであれば、そんな馬鹿なとさえ思った。
リビングに通されて美味しそうなクッキーと紅茶でおもてなしされた3人は、キーアから譜面を受け取って愕然としていた。


「なにこれ、この曲…RAINBOWDREAMって、4人じゃ歌えないわよ?」


友千香の発言はもっともであって、控えめな七海は譜面を見ているだけだが早苗はしっかりとキーアを睨んでみた。


「ですから、その曲は僕がプリンス・ゲームを終わらせるために作りました」

「は?」


キーアは話し始めた。それは早苗には到底思いつかなかった仮説で、口を開いたまま固まってしまうほどの衝撃だった。


「まず、このゲームおかしいんです。7つの魂を集めなくちゃならないのに、トキヤくんは2つの魂を手にした時点でとても苦しんでいました。
 あれじゃ7つはとても持てない。最初の疑問はここからでした」


早苗の膝の上で、トキヤが姿勢を正した。聞く意味があると思ったらしい。


「そして更に疑問だったのが、魂と呼ばれるパーツを抜いたのに人形が動けること。」

「確かに、言われてみると"魂"抜かれたら普通死ぬわよね」

「更にシャイニーの残した遺言、『7つを1つにする』という言い回しです。
 そこで調べていたのは生前シャイニーが好んでいた趣味についてです。彼が大の音楽好きであることは有名ですが、更に言うなれば彼はある特定の音楽に心惹かれていました」

「と、いうと?」


机の上に、プリントアウトされた紙が一枚置かれた。そこには中世ヨーロッパのような劇場が映っていて、役者と思われるなかなか顔立ちの良い男性が描かれていた。


「役者、歌い手。つまり当時で言うところのアイドルです。そこから考えて1つの仮説を立ててみました。シャイニーの言う『7つを1つに』とは、ローザミスティカではなくて歌声、更に言うのであれば心の話ではないでしょうか?」










文化祭の出番を終えた時、それぞれのドールの名前を呼ぶ女子生徒たちに手を振りながら、早苗たちは舞台袖へと戻ってきた。口々に感想を言い合うドールたちはとても生き生きしていて、演奏しただけだった早苗たちも今までに無いほどの高揚を味わっている。


「さ、着替えに戻りましょ」


友千香に促されて砂月の待っている控室に入った時だった。
音也の体から赤い光が。


「あ、あれ!?俺のローザミスティカ!」


真斗の体からは青色の、翔の体からはピンクの、セシルからは緑、那月から黄色、レンからオレンジの、そして早苗の隣に居るトキヤからは紫色の輝きが飛び出してきた。
それは部屋の中心で1つに集まると一際強く白い光を放って、思わず目を瞑った早苗が目を開いた時には一人の男性が立っていた。
薄いピンクっぽい茶色のスーツに、赤と白の水玉ネクタイ。そしてサングラス…


「シャイニー!!」


何故か一番に叫んだキーアの言葉に返事をするように、男性はくるくると回って親指をぐっとたてた。


「イエース☆ ミーこそがドールたちの製作者、シャイニング早乙女なのよ、なのなのYO☆」


全員が思ったことだろうが、敢えて早苗は心のなかで言った。


(キャラが濃い!!)


「キーアさーん、よくぞ気づいてくれましーたー。これでドールたちはいつでも人間に、ドールにと姿を変え好きに暮らすことができマス」


シャイニング早乙女、と思われる人間の発言に、ドールも人間4人も固まった。


「YOUたち4人のお陰でドールたちは人間らしい心を育み、愛を覚えまシた。よって、人間として暮らすことを許可しマース!」







トキヤENDへ


レンENDへ


那月ENDへ


砂月ENDへ








2013/09/12 今昔
またエンディングが分岐します!
お好きなエンディングを選んでお進み下さい。
トキヤ以外はすべてキーアさんがヒロインです。





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