悟浄はタオルを肩に掛け、ポタポタと髪から水滴を零しながら民家の外を左右見渡した。















「――玲ねぇさんだ。
あの人は旦那さんを亡くしてから、ずっと『ああ』なんだ。
だから村の厄介者扱いされてる」














玲ねえさん
と呼ばれる女性は、楽しそうに歌いながら裸足のままで村の中を徘徊していたのだが
村の住人に『また勝手に外に出て!!』『静かに!!』と抑えられている。














「…でも、玲ねえさんの旦那は
この村に殺されたんだ」















沈黙が訪れた――
壊れた玲ねぇさんは村の住人に家の中へと無理矢理連れて行かれるのを、言葉を失ったまま見送った














「あの人の旦那も物資を調達に出た帰り、今日の父さんみたいに妖怪に襲われて――
…でも、場所が悪かった。
村に近すぎて、妖怪が橋の対岸まで来ちまったんだ
村の人達はその騒ぎに気付いてた。
気付いててワザと橋を下ろさなかった」


「――村を守る為にか」


「村の為の犠牲…酷い」


「――橋を下ろせば助けれたかもしれないんだぞ!?
この村の奴らは、仲間を犠牲にしたんだ!!
…俺は
こんな村大っ嫌いだ」














少年はそのまま家へと入って行った。
”大っ嫌いだ”と言った少年の顔が、惷香は頭にこびりついて…















「………頭では理解しているんでしょうね
忌むべきは村ではなく、妖怪だという事を」


「感情では認められないのね
子供なのに、あんなこ…
ッ…!?」









少年を見ていた惷香が振り返った瞬間、言葉を詰まらせながら顔を背けた









「?
どうしました?」















惷香は、何も言わずに顔を赤らめ、家へと入って行った。















「……悟空、悟浄
とりあえず
服を着ろ。」


「あーーー…」


「これが原因か…」





.

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