「ここまでの道中で三つほど集落の跡を見掛けたが、どこも荒らされた後だった」


「…この界隈の村はほとんど全滅だから」


「確かに、この辺りの妖怪の出現率は異常じゃあねーよな」


「お陰でこんな、服もボロッボロだしさぁ」


「それは悟空が暴れたり、悟浄のタバコで焦がしたのも原因じゃないの」


「そうだ!悟浄がタバコ投げて来たんだ!」


「ありゃ妖怪が来たからタバコ落とした先にテメーがいたんだっつーの!」


「村に入る時、橋を通ったろ?」















少年は5人の前に淹れたてのお茶を置く。
少年は淡々と話を続けるのだが、その表情はどこか影が差していて…














「普段はあの跳ね橋を上げたままにしてるから
この村だけは妖怪に見つけられずに済んでいる。
だけど…」


「?」


「――けどまァ見ての通り陰気で排他的な村になっちまってな
もう長いこと妖怪に怯えて息を潜めて、灯りもほとんど点けずに暮らしてる。
昔は小さくても生き生きとした村だったんだがな」














途中で入って来た少年の父親。
父親は先程妖怪に襲われた男の片割れだ。















「…お察しします」


「――長いするつもりはない。
俺達も、先を急ぐ旅なんでな」


「すまんね…
しかし、いずれにせよ
あんたらは明日の朝までここに居てもらわんとならん」


「…なんでまた」


「日中や夜は妖怪に見つかり易い
跳ね橋は、滅多な事で使わない『決まり』なんだ」














その日の夕方、民家で久方ぶりのお風呂タイム。
もちろん男女別などのない民家のお風呂は、惷香が入り、三蔵と八戒が済ませた後
悟空と悟浄がお風呂を頂いていた。














「…っくあ〜〜〜
ちょぉおキモチイイ〜〜〜」


「井戸のある村で助かったぜマジで…」


「俺も後で八戒に髪切ってもらお
ジャマっけ」


「しっかし、たいぶ文化の違うトコまで来ちまったなーー」


「食った事ない物、いっぱい出てくるもんな!!」


「あくまで食物基準かよ」















浴槽前には少し広めの洗い場
そこに悟空と悟浄はお湯を被り、丁寧に数日分の汚れを落としながら他愛のない会話をしていた。

そんな会話中に、ガタリ…と窓が鳴った














「てかさ、この辺りってもう桃源郷の『西域』なんだろ?
『てんじく』ってのはあとどれくらい……」















鳴った窓を2人は振り返る。



窓にベタリ…と張り付く髪の長い女が
2人をジーーと見ていた…















「ぎゃああああああああああ――」















その悲鳴は風呂を済ませた3人の耳にも届いた















「?」


「――なんだよ
うるせえな」


「静かにって言ったでしょう、二人とも」


「ゴキブリだったら悟浄で慣れてるじゃない」


「〜〜〜出た!!
なんか怖いのでた!!!」


「っ…!!?ちょ…!!」


「あァ?」


「今 そこの窓に女の……」













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