山間に囲まれた小さな村があった。

2人の男は、先程倒れた5人とダメになった馬車の荷物を車に乗せ
その小さな村へと趣いた。


村にある1軒の民家で、5人は一心不乱に出された食事を無我夢中で貪り出す。




その民家の外では、村の住人の数人が2人の男の前に立ちふさがり
話し込んでいた。














「あんな余所者を村に連れ込むなど、我々の置かれている状況を考えてもみろ」


「仕方ないだろう、命を助けてもらったんだ」


「ロバがやられちまったから、車で物資も運んでくれたワケだし」


「しかしねェ……
若いのに、あんな浮浪者みたいなナリで」














そんな会話は5人の耳に届く事もなく、料理の奪い合いが起きている。
その奪い合いも、ハリセンが
スパーン!と鳴ると、一気に静かになるのだった。














「こんな危険な地域まで何しに来たんだか」


「とにかく、いつ何がきっかけでこの村が妖怪に見つかるか分からん。
あの者らには悪いが、なるたけ早く出て行ってもらわんとな」


「まったくだ」














そんな会話を横目に、5人のいる民家へと1人の少年が入っていく。
少年は家に入るなり、ビクッと身体を揺らした。















「―――っ!!?」


「……んごーーー」


「ぐかーーー」


「スーーーー」


「ぐごーーーー」


「くーーー」











家のリビングに当たる部屋で、料理を食べ終え満腹になったのか
5人はグッスリと眠っていた。















「(…この人達
『外』の匂いだ)
………汗クサ……。」














少年は寝ている5人の傍で鼻をスン…と鳴らす。
外では5人を快く思わない人達がボソボソと会話しているのも知らずに寝ている5人が起きたのは、数時間経ってからだった。












「すみません
朝から押しかけてご馳走になった上、寝てしまって…」


「飲まず食わずでここしばらく、ロクに安眠できなくてよ」


「久しぶりにゆっくり眠れたわ」


「……別に
父さん助けてくれたって言うし」


「はーーーー
今日ばかりはマジで死ぬかと思った〜〜」


「空腹でかァ?!
もっと死ぬよーな目に何度も遭ってんだろーが!」


「……風呂に入りてぇ……」


「三蔵も悟空も髪伸びたね
そろそろ切らないといけないなァ」


「ホラ、あまり騒々しくしない」














部屋の壁に寄りかかって座り、5人はキッチンでお茶の用意をしている少年と会話をする。














「…俺はいいけど
大人達が口うるさいから、静かにした方がいいよ。
騒ぐと大人達にぶたれるんだ」


「ヒソヒソ(怒られたじゃねーかよッ)」


「ヒソヒソ(なんで俺に言うんだ)」


「2人、何やってるのよ…」


「ええ、とても落ち着いた村ですもんね」


「――隠れ里ってやつか」














タバコの煙を揺らしながら、三蔵は少年をジッと見つめた。

それはこの村に来るまでに見つけた集落が気になっていたのだった。










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