弐拾六




「外傷も無いのに意識がない。
貧血や目眩でも起こしたんだろう」














三蔵は横たえる女性を見下ろしながらタバコに火を付けた。


妖怪とは言え、このままここに放置する訳にも行かず、どの道今夜は野宿。
日も傾いている事もあって、近くの開けた場所にテントを張った。







テント内に彼女を寝かせ
夕飯の用意は八戒がする中、惷香は彼女の介抱をした。


介抱と言っても、冷やしたタオルを額に乗せ、金糸で体内で怪我がないかを確認する程度。





金糸をシュル…と戻し
深い溜め息を漏らした。














「どうした」


「あ、三蔵。
体内も軽く診てみたけど、何処も悪い所は見当たらなくて…」


「放っとけ。
じき目が覚めるだろう。
夕飯が出来たそうだ。
さっさとしろ」


「ん……」













曇った表情を浮かべながら、三蔵の後を追ってテントを這い出る。


焚火前では簡易的だが用意された少し早めの夕飯が並ぶ。
















「ごめんね八戒。
1人で働かせちゃって」


「構いませんよ。
逆に介抱お疲れ様でした。
彼女はどうですか?」


「体内にも大して怪我もないんだけど、一向に起きないのよね…」


「腹減ったら起きるって!」


「悟空。
痺れは治ったの?」


「もーバリバリ元気!
チョー腹減ったって!」


「オメーはいつもだろーが」


「うるせー!
ンな事言うゴキブリ頭に食わせる餃子はないッ!」


「あッ!てめ!
俺の餃子取んじゃねーよ!」


「静かに食え!!
バカ共がッ!!」














スパーンッ!
















「いってー!!」


「久しぶりに三蔵のハリセン見た気がする」














クスクス…と笑いながらも
惷香はテントが気になって仕方がなかった







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