弐拾五




「………なぁ逃げた方がいーんじゃねェの?」


「ダメに決まってるでしょ!
私診て来る!」


「あッおい!
無闇に……チッ」













三蔵の声も聞かないまま
惷香はジープから飛び降りると、倒れた女性へと駆け寄った。















「あの!大丈夫ですか?
意識はありますか?」














惷香の声に反応もなく、仕方なく仰向けへと体勢を変えさせた。



惷香は一瞬息を飲んだ。




女性は綺麗な色白美人で
シルバーの長い髪が肌に合う

――――妖怪だった。



耳は尖り、右額には妖怪独特の模様がある。



だが彼女は意識を失ったまま…














「どこかぶつけたのかな…
外傷は診た所…ないけれど」


「惷香。
どうしました?」















八戒も慌てて近寄って来ると
女性を見て、フム…と一瞬目を細めた。




こんな山奥で妖怪が突然現れたとは、三蔵一行を陥れる罠かもしれない。



そんな考えが頭に浮かび
八戒はキョロ…と左右見渡したのだが、気配もなければ誰1人、何1つも影も形もなかった。















「罠…ではないようですね。
彼女は一体何故こんな山奥にいたのかも不思議ですが…」


「外傷もないのに気を失ったままなの。
どうしたんだろう…」


「どうした」














いつまでもジープに戻らないのを耐え兼ね、三蔵が眉間の皺を深めながら近寄って来た。


悟浄も気になったのか
ズボンに手を入れたまま覗き込むように近寄って来る。
















「ほーこりゃ美人だな。
怪我してんのか?」


「悟浄には美人センサーでも付いてる訳…?」


「女のコセンサーならあるぜ」


「言ってろ」








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