その時聞こえてきた玲ねぇさんの歌















「――そこまでだ三蔵一行ォ!
武器捨てろ!!」


「きゃああ!!」


「玲お姉ちゃん!!」















このままでは勝てないと悟った妖怪は、フラフラと歌いながら歩く玲ねぇさんを人質として喉元に刀を突きつける

玲ねぇさんはあいも変わらず歌を歌い続けていて…















「下手に動いたらこの女の命はねぇぞ!!
天下の最高僧が、一般人を犠牲にゃできねぇだろ!?」


「……でたーーーー。」


「う・ぜ・え。」


「チッ何度目だよ
このシチュエーション」


「悪役の行動なんてどの土地に行っても大差ないですねえ」


「もうこういうデフォルメなのって単調なのにねェ…」


「このイカレ女、後で楽しむつもりで生かしておいて正解だったぜ
オラ、来い!!
――歌ってんじゃねぇ!!」












バシッ!と妖怪は玲ねぇさんの頬に平手打ちをする















「玲姉ちゃん!!」


「――おやめタムロ!!」


「放せよッ!!」


「今度は姉ちゃんまで見殺しにするつもりかよ!!?」


「だって……ねぇ」


「自業自得ってヤツさ…」


「あの娘のせいでこの村がこんな目に遭っているんだからな」















玲ねぇさんを助けに行こうとするタムロを村の住人達は止めながら、互いの顔色を伺っている。

そんな人達にタムロはとうとうはち切れた















「バカヤローーーー!!
どうして皆気付かないんだよ!!?
――玲姉ちゃんが
姉ちゃんがずっとずっと歌ってるあの歌は……!!」


「――――……祭り
この村の…祭りの歌だ」














そう、玲ねえさんはずっと昔のように笑い合える村に戻るのを祈って歌い続けていたのだ…












「……!!」


「この村が妖怪から隠れて暮らすようになって
あの事件で心がズタズタに壊れてからもずっと姉ちゃんは子供達に歌を教えてくれてたんだ。
伝統の歌を忘れないようにって
――いつの日か また祭りができたら皆で一緒に歌おうねって!!」














大人達の前で一気に吐き出した玲ねえさんの想い。
妖怪に人質にされ、殴られながらもタムロの言葉に涙を流していた



そんなタムロの肩を父親が叩いた。















「……俺達は間違えていたのかもしれない。
ただ生き延びる事だけに固執して
――子供達が自由にはしゃいだり笑ったり
歌う事すらできない村になんの幸せがあるんだい」









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