五拾参


「惷香ちゃん
大丈夫?
どこか痛むのか?」

「い、いえ
違います
なんでもありませんから…」








取り繕うかの様に笑う
その姿を三蔵は黙って見ていた



その後八戒の作った料理を皆で食べ
また交代で見張りをして寝る事にした


当然の事でテントは1つしかないので皆で雑魚寝

初日は疲れてしまい何かを考える前に眠りに付いたが
今日はどうも寝付けない


隣の悟空は高鼾をかいて枕に足を乗せて寝ているし
その奥では悟浄が胸まで布団を掛けスヤスヤと寝ている
一番奥で八戒が向こうを向いて寝息も静かに寝ていた


惷香は布団から出て外に出た
まだ踵が痛むせいで 靴をちゃんと履けずに踵を潰して履いた


外に出ると焚火の前で三蔵が毛布を膝に掛け煙草を吸っていた








「どうした
眠れないのか」









三蔵は惷香に気が付いて声を静かに掛けた








「…ええ」


「ボサッと突っ立ってないで
こっちに座ればいいだろーが」


「あ、はい」









罰が悪い顔をしながら
惷香は三蔵の向かいに腰を下ろした







「宿屋を出る前何か言いかけたな」


「あ…」


「あれはさっき悟空に聞いた内容に関係しているのか?」








焚火の明りで三蔵の金色の髪もオレンジ色に染まり
真っ直ぐな瞳が焚火の光で輝きを増す








「はい…」


「『三蔵と出会う前誰かといなかったか』
と聞いていたな」


「はい……」


「アイツは500年もの間
閉じ込められていたんだ」


「ご、500年…!?」


「ああ」


「じゃ、じゃあ…悟空は500年も前から生きて…?」


「そうなる
お前の言う本には
あいつの正体は書いてはいなかったのか?」


「あ…確か大地が産んだ…?」


「そうだ
だから不思議はない」


「じゃあ 私の【心残り】って
まさか……」


「…?
どういう事だ?」










――500年も前の事だとでも言うの?







.

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