五拾四


―天上界―








「観世音菩薩
何故あの者に今記憶が?」


「知るかよ
俺のせいじゃねェぞ?」


「分かっております
しかし…何故あの者にだけ記憶を呼び覚ましたのでしょうか…」


「余程辛かったんだろうよ
500年前の出来事が
500年も色褪せない想いってのもオツじゃねーか?」


「そういう問題では御座いません!」


「なら俺が少し手助けでもしてやるとするか
ククク………」










なぁ 惷香…


お前はこの天界では人形の様だったな


今はどうだ?


お前を変えたアイツ等なら



お前の想いも遂げるんじゃねーか?










―下界―









「おいどうした?」








惷香は顔面蒼白で焚火の明りを茫然と見た








「500年とは何の事だ?」

「夢を…見たんです」


「夢?」


「もう少し幼い悟空と…」


「悟空と?」


「あなたと八戒に悟浄の似た人の夢を…」

「俺達に似た人?」


「いえ でも…」











惷香は俯いて考えた

この世界に来て出会ったのがこの4人で


何かの
そう、ゲームや本のイメージに出会った彼等の顔が出ただけなのかもしれない


500年も前の事を
【心残り】でこの世界に来たなんて
馬鹿げてる―…

もう500年前なんて 悟空しか生きていないじゃない…





そう思うと惷香はクスッと笑えた









「なんだ」


「いえ、でもあくまでも夢です
本当に…
気にしないで下さい」








そう言うとスッキリしたのか
眠気が襲って来た









「じゃあそろそろ私も寝ますね
お付き合い下さってありがとう御座いました」








そう言うと惷香はペコリと会釈をして
テントへと向かい歩いた

その時









「おい」


「はい?」

「いい加減敬語は辞めろ
気味が悪い」









一瞬惷香は目を丸めたが
すぐにフッと笑みが零れた








「ありがとう三蔵
おやすみ」








そう告げ惷香はテントの自分の布団で深い眠りに付いた








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