五拾弐


三蔵は無言でその足をグイッと持ち上げた








「きゃッ……!」









突然持ち上げられたので体勢が後ろに仰け反る

どうにか倒れない様に身体の後ろに手を着いて阻止したのはいいが

膝まであるスカートは太股まで捲り上がる








「っっ!?」









慌ててスカートを手で押さえ体勢を起こす








「お〜いい眺めだったのに〜」








悟浄は嬉しそうに目を輝かせ
手を額に遠くと見る様な動きで喜んだが
三蔵の一睨みで回れ右をした


血の滲んだ踵に三蔵は日本酒を掛けた








「ッんんっ…!!」








染みる。

熱くなるのが分かった


「消毒だ
我慢しろ」









それから傷口に破いた布をグルグルと巻き付けた








「これで少しはマシだろう」


「おー三蔵サマやっさし〜」








悟浄が囃し立てると三蔵は








「何か言ったか?」








と拳銃と取り出し悟浄は逃げ惑った








「あ、ありがとうございますッ…!」


「フン
礼言う程の物でもねェんだよ」


「さんぞーさまってば おやさし…」








カチャリ――……








「そのうざったい頭をサッパリさせてやる
そこに直れ」


「じょ…ジョーダンですよ〜サンゾーさまァ〜」


「三度はねーぞ」









と三蔵は溜息交じりで銃をしまうと八戒に酒を要求した

悟空が惷香の隣に来るとニカリと笑う








「三蔵はキツイ言い方だけど
あったけーんだ」


「悟空…
悟空は三蔵が好きなんですね」


「好き?よくわかんねーけど俺三蔵と出会って良かったと思うんだ」








フッと夢の事を思い出す
あの三蔵に似た人間と悟空はどうして一緒に今いないのか…


そして 何故今三蔵といるのか








「ねぇ?悟空…あの」


「ん?」


「悟空は三蔵を出会う前は何をしていたの?
その前誰かといなかった?」


「三蔵と出会う前?
俺気が付いた時には閉じ込められてたンだよ
その前の記憶はねーンだ」


「え…?」


「だから三蔵と出会う前に誰かといたとかないよ?」


「そん…な…」









どういう事?
あれはやっぱりただの夢?







.

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