参拾
「おはようございます」
ドアを開け申し訳なさそうに惷香は声を掛ける
「おはよー!」
「おはよーさん」
「おはようございます」
次々に朝の挨拶が出る中
三蔵は相変わらず新聞を広げながらコーヒーを口に運んでいた
朝食は宿屋の中にある食事が出来る店で済ませ
部屋で荷物整理を始めた時に八戒が口を開いた
「惷香さん
これからどうなさるんですか?」
正直その質問は困惑する
金もない上に行き場も何もかも分からない
でもこの人達には付いては行けない事だけは自覚していた
それは本に
この4人が桃源郷に向かう事を知っていたから…
そんな考えの中三蔵が尋ねる
「おい
お前に聞きたい事がある」
三蔵は立ち上がり惷香に近寄る
「何ですか?」
「お前俺達を本で読んだ
と言ったな」
「ええ」
「その本には敵についても書いてあったろう」
「…はい」
「そこに【烏哭】と言うヤツが出て来たか?」
「いいえ?」
「そうか…ならいい」
三蔵は席に座ると新聞を広げた
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