拾四


「それは大変でしたね…
でも誘拐なのか何なのか
どうも変わった話ですね」


「そうだな
普通ならばどこかに連れ込むだろう
目的が分からんな」


「そう…ですよね」








惷香は
やはり自分でも思ってはいたが
他人までにも
『おかしい』と言われると不安に駈られた









「これからどうなさるのですか?」








落ち込む惷香に片メガネの男が優しく心配そうに尋ねる







「町に行こうと思います…」









単純に今どこにいるのかも分からない以上
どこでもいいので町で情報を得るしかない



惷香はそう思った








「ここからだと2日掛かりますからね
良かったら僕達車なので乗せて行きますよ」


「え、いいです
そんな…」


「いいんですよ
狭いですが通り道ですしね」








片メガネの男がニッコリと微笑んだ








「いいねーいいねームサ苦しいよりは華が必要ってかァ」









赤い髪の男はそう言いながら惷香の肩に腕を回す

そこに先程いなくなった小さい男が戻って来た









「さーんぞ!
殺っといたよー」


「御苦労
おい八戒
ちょっと来い」








金髪の男が片メガネの男を惷香から離れた場所に呼ぶ








「どうしました?」


「おい
あの女安全かも分からねーで車に乗せるんじゃねぇ」


「大丈夫ですよ
妖怪でもありませんし
何よりあの動揺の仕方は本物の迷子です
後からこの森で
『お前さっき三蔵一行といたなー』と違う妖怪に襲われたらどうするんです?」


「ちっ!
勝手にしろ!」









そんな会話のやり取りは
赤い髪の男と小さな男との会話で惷香の耳に入る事はなかった








「ではあちらにジープがあるのでどうぞ」


「本当にすみません
持ち合わせもありませんが…」


「構いませんよ
困った時はお互い様ですからね」








安心した惷香は4人の後を追う様にジープに向かった






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