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衣装合わせで逃げたくなる


あぁ、昨日は本当に最悪だった。マリカのせいで白雪姫をやるはめになったってのに。
どうやら地獄は今日も続くらしい。
何故なら今、俺の目の前には悪魔がいるからだ。衣装係という名の悪魔が。


「ほら、ボリス早くしなよ」

「コプチェフてめぇ裏切ったな」


目の前に立ちはだかる刺客に敵意をむき出しにする俺。だがコプチェフはそれをものともせず、人聞き悪いなーとにこやかに言いながらメジャーを準備した。
そう、これこそが第2の地獄、衣装係主催の採寸だ。
それでも俺は往生際悪く逃げ道を探す。後退りながら、何かいい言い訳はないかと頭をフル回転させた。


「そうだ、王子、王子様は? 重要な役だろ?」

「残念ながらメインは白雪姫。それにマリカのとこにはキレネンコが行ったよ」


メジャーを構えてまた一歩近づいてくるコプチェフに、俺の逃げ場は無くなったことを思い知らされる。
仕方なく、俺がしぶしぶ腕を差し出すとコプチェフは楽しそうに測りながら、手際よく紙に採寸したサイズを書き込んでいった。


「シンプルにしろよ」

「安心して。すっごくかわいいのが出来上がる予定だから」


俺の言葉をスルーして、そう言ったコプチェフが得意げにドレスのデザインが描かれた紙を見せてくる。紙の上のイメージ画からもわかる程のかわいらしいフリフリのそれを見た俺は、頭の中に完成したドレスを思い浮かんできて気が遠くなっていった。





(ちょっキレネンコ、そこ測る必要ある?)
(いいから大人しくしてろ)

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