溜め息と怒号と悲鳴
『はぁ……』
「はぁ……じゃねぇよこの野郎」
休み時間。さんざんいじられからかわれた俺とマリカはぐったりと机に突っ伏していた。
何故マリカもかと言うと、せめてもの仕返しにと王子役に推薦してやったら俺と同じように無言の圧力で決まったからだ。ふん、ざまあみろ。
だがそんな中コプチェフは他人事みてぇに笑ってやがるし、キレネンコの奴はマリカを白雪姫にして王子を代えろとまるで般若のような顔で抗議してたし。
まぁ俺としてはそっちの方がありがたいんだが、皆どうしても俺とマリカにやらせたいらしく、もう決まった事だからとクラス一丸となってキレネンコをなだめていた。
あぁ、なんか納得いかねぇ。……その団結力をもっと別のとこに使えよ。
『裏方で済ます予定だったのにー。ボリスのばかぁー』
「おあいこだろ。つーか、役代わってくれよ」
なげやりになって嘆くマリカに頼んでみるものの、そう易々OKしてくれるわけがなかった。俺の考えは甘かったらしい。
『王子の方がまだマシだから嫌』
それでも、きっぱり即答されてしまっても俺はもう少し粘った。
俺だって白雪姫なんざやりたくねぇんだよ。
「お前のが背低いだろ」
『今年はウケ狙いでいくからいいんですー』
「キスシーンあるけど」
『役代えたってキスシーンあるのに変わりないけど』
こうして、たいして交渉もしないうちに俺は何も言い返せなくなってしまった。マリカは頬杖をついて気だるげに唇を尖らせている。
そんなマリカを見て、やっぱり諦めて大人しく白雪姫をやるべきなのか? と最悪の事態を覚悟させられ、さらに早退願望が強くなった。もうため息しか出ねぇ。
「はぁ……」
(なんで溜め息なんかついてるの? 白雪姫)
(誰かさんのせいだよ、王子様)
(……マリカを白雪姫にしろ)
(キレネンコ止めなって!)
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