俺がこの学園に来たときはすでに中等部に会長はいなかったのだ



でも、




「噂は聞いてましたよ」

「…」


「随分お遊びが激しいとか。美食家らしいとか。中等部では相当だったらしいですね」


「…良い話はなかったのかよ」

「……そうですね…。あると言えばありましたけど…言わないでおいときます」





本当に悪い噂ばかりだった
いや、良い噂も確かにあるんだろうけど俺が聞いたのは良くないものだった。


だから、会長が帝さんと知ったときは驚いた




「なんだよ、それ」


少し笑った横顔は綺麗だった
モテるのもわかる



「ま、いいじゃないですか。それでもモテてるんですから」


その容姿に惹かれない者はいないだろう。




「俺には欲しい奴がいるんだ」

「……そう、なんですか」


「おまえも知ってるだろう?」

「…噂は聞いたことがあります」

その話は気まずい。
と、いうかその話を俺にするというとは彼はどういうつもりなのだろうか…



「そいつの声とな…」



「…」



立ち止まった。
目の前には会長の部屋の扉だった



「…、とりあえず入るか」


「えっ!生徒会室じゃないんですかっ?」

「あぁ。2人で話したかったからな」

「っ、」


話が違うぞ!ジュン!!



「入れ」

「……お邪魔します」



扉を開け、入る

ここは二回目だが…やっぱり



「広い」



「一般とは違うからな」

「変な制度…」

「家のランクが違うんだよ」

「やな奴って感じするんでそうゆうのやめた方がいいですよ」

「ははっ」



笑った。
さっきみたいな微笑じゃなくて本当の笑顔。

会長としてみた笑顔は初めてだ


会長としての顔はいつも気むずかしそうな顔か眉間にしわを寄せた不機嫌そうな顔だった


噂でも笑った顔はかなりレアらしいから、普段からあの気むずかしい顔なんだろう。


もったいない。



「笑った顔のが良いですね」

「っ」

「ほら、眉間にしわ寄せちゃだめですよ」



背伸びをして俺の指を会長の眉間に当ててぐりぐり皺をほぐす。



「笑顔のが綺麗です。」



これ、本心


すると会長の腕が腰に回ってぐいっと寄せられた


「っ!ちょっと、会長っ」


背伸び状態で腰を抱き寄せられては少々苦しい。足が宙に浮きそうになって会長のワイシャツを鷲掴む。



「名前でいいぞ」

「…藤堂先輩?」

「違う」


「…?、……!」



気づくと目の前いっぱいに会長の顔



唇にはやわらかい感触








キスしてる……!




「…!っ…んー!」


「…色気ねぇな」


「あっあんた!」

「口、開けろよな」

「なっなんで、っ!んっ……ふぁ…やめっ!…ん、」



また、キスされた…
でもこんなキス初めてだ

口内で他人の舌が暴れる
舌を吸われ上顎を舐められ

体の奥が甘くうずく
背筋がくすぐったい


なんなんだろう、これは



腰が砕ける…っ


「っ…んっ………ふ」



息の仕方なんてわからなかった
苦しくなり背中を必死に叩くと会長は離れた


「ごちそーさん」

「はっ…か、会長!な、何してっ!」


「だから、名前って言ってるだろ?」

「え、とう「帝な。」

「え…み、帝先輩?」

「呼び捨てで構わない」

「いや、年上に呼び捨ては…」

「本人が良いって言ってんだよ」


「じゃあ、帝先輩と帝さん。どっちがいいですか?」

「(…さんはユウが呼んでるからな…)じゃあ先輩でいい」

「帝先輩、ですね」





憂はあまり気にしていなかった
名前で呼ぶことがどれほど重要視されているかを、


「っ、やっぱり似てる」

「は?」




ヴーッヴーッ

会長の携帯がなる


「ん?隼か…」






「…」

計画通り



ピッ

「なんだ」

『今ユウが下にいるよ』

「なんだと!だって、」


俺をちらりと見る帝先輩



「……わかった。報告ご苦労」

『別にいーよ。じゃね』


「あぁ…」



携帯をポケットにしまい彼は言った


「すまん。行くところが出来た」

「そうですか」

「下まで送ろう」

「ありがとうございます」





部屋を出てエレベーターに乗る


「話ってなんなんだったんですか?」

「あぁ。確認を、しようかと想ってな。」

「確認?」

「…もう意味はないがな」

「そうですか」


じゃあ、と思った


「でも…」

「え?…あ!」




眼鏡がはずされた
黒のカラコンやっててよかった




「…なんですか」



エレベーターの中で日光がないとは言え眩しい…


人工的な光も苦手だ


「黒…か」



ぽつりとつぶやく。


「え…」

「いや…てかお前眼鏡ない方がいいぞ」

「いや、諸事情がありまして…」

「あ?これ、度入ってねぇじゃねぇか」

「だから、事情が」

「変装してたのか」

「いや、あのっ」



話を聞いてくれ…



「確かにこの顔なら話題になるだろうなぁ」


「あ、あの」



顎に手を当て上を向かせた
キスをするわけじゃないみたいなので、強い抵抗もしなかった。





すると…



チンッ



ウィンッ







パシャッ








「え…」

「…ちっ」



チンッ は、エレベーターが着いた音

ウィンッ は扉が開く音

パシャッ は、カメラの音





カメラ………?





「明日は面倒なことになるな」

「え…ちょっ!」

「じゃあな」

「おいっ…」



足早に去っていく帝先輩。


俺も早く行かなきゃいけないので足早に向かう。その先はコンビニのトイレ。

トイレに入ると怜と真哉がいた






「遅いよっ」

「早くっ会長が来るかもしれない」



今の真哉の姿は、赤茶の髪に髪とお揃いの赤茶のカラコンに服装がズボンは学生服で上はTシャツにパーカー。




そう、ジュンが考えた計画はこうだ。