2014 Xmas!




ルネのショー、やってくれることになってるんだ。私の家に来て一息、ユウキくんは言い終えた。

「ルネ?」

「そ、ミクリさん……は知ってるよな。今日、ラブカスのショーをするって言っていて」

つまりだな、ええとさ、とユウキくんが歯切れ悪く言うので、もしかしてデート?と嬉々として聴くと、まあ、そんな感じ…と照れたように笑われた。デート!

「ルネのジムのショーでしょ!不定期にしかやってないってやつ…」

「そう、それ」

「この間読んだ雑誌に載ってたんだ」

「ふうん… 全然知らなかった。でも、喜んでくれるんならよかった」

全然知らなかった、と言った時のユウキくんの視線がふらりと泳ぐ。本当は私が気にしているのを知ってたのに、偶然のふりをしてるところが、なんていうかユウキくんらしい。

これはもう目一杯にお洒落をしないと。なんてったってユウキくんはお父さんの図鑑集めのお手伝いで忙しいので、大抵二人で出かける時は動きやすい服に大量のモンスターボール、と少なくとも世間一般のデートとは言えない。

所謂クリスマスイブというやつに、二人で出掛けるだなんて、もうこれは世の中の女の子の憧れにどストライク間違いない。

それなのに。

それなのに!

「ポケモンが大量発生したらしいんだ! ユウキくん、確認してきてくれ!」

「えっ…ええと、俺、今日は用事が」

「そんなこと言わないでさ!研究員一同のお願い!」



「えーっ!? ジムトレーナーの仕事は今日はないって…」

「言われてたけど急にチャレンジャーが来たんだって!私だって呼び出されたんだから文句も言いたいわよ!」

「じ、実は私風邪で」

「ユウキくんと出掛けるんでしょ、知ってるわよ!」

けたたましく響いたポケナビからの呼び出しに、私とユウキくんはミシロタウンの家の前でお互い顔を見合わせた。そんなこんなで空を飛ぶこと十数分、本当に分かってない!と叫び出したくなる気持ちを抑えて私は正面のチャレンジャーと対峙する。こんな日にジムに挑戦だなんて…一日くらい待ってくれればいいのに!しかしジムは年中無休、カレンダーの日付を知ってか知らずにか、何人かのトレーナーが次々とジム挑戦に訪れた。ユウキくんもなんで今日に限って大量発生するんだ?とポケモン達に文句の一つも言いたいに違いない。形は違えど、ポケモントレーナーに休みはないということか。

「ごめんねユウキくん」

「…別に、いいよ。仕方無いし、っていうか俺の方こそ」

結局普段通りの1日を送り、太陽はすっかり地平編の下へ落ちた頃にジムから出る支度をする。ポケギアからは本当は今日一日を一緒に過ごすはずだったユウキくんの声が響いて、会えないのが一層悔やまれた。

「ルネのショー、明日は…」
「今日だけだよ。無理言ってやってもらったんだ」

やっぱりユウキくんがミクリさんに頼んでたのか、と合点がいく。ジムリーダーの仕事もあるだろうし、そう何日も続けてというのは無理な話だろう。

「…けど、出掛けられないのは悔しいから」

「え?」

ポケナビの音声と肉声とが重なる。振り返って、ジムを出たところに立っているユウキくんと目が合った。

「これから、暇?」

「暇…だよ…」

研究のお手伝いで疲れているはずなのにわざわざ来てくれたんだと思うと、寒い外気の中にいるのに胸の辺りが熱くなる。じゃあ、行こう、とユウキくんが踵を返してからもう一度振り返った。指先を絡めて手を取られる。恋人繋ぎなんて初めてだ。

「もう時間も時間だし、この辺回るくらいしかできないと思うけど…あっちの方にさっき、ツリーが出てた」

「うん、うん」

なんでか泣き出しそうになって必死に堪える。二人で手を繋いで歩き出して、ぽつり、ユウキくんが口を開いた。

「…ごめんな」

「え…」

「結局デートらしいデート、出来なくて」

「そんなの別にいいよ。私、ユウキくんといられればどこでも嬉しいよ」

「……はあー…」

大きい溜息をつかれてユウキくん?と首を傾げる。ユウキくんは僅かに視線を寄越してから、また反らした。

「帰したくなくなるから…」

そう零して真っ赤になったユウキくんと視線がぶつかる。……多分今、私の顔も真っ赤だ。

いつの間にか降ってきた雪の中に、二人分の影が滲んだ。




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20141224
真っ直ぐ言われると照れる

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