Metempsychosis
in Summon Night 3
召還?直後の話
ぱちくりと瞬いて、こてんと首を傾げる。
見回せば、随分高い所にいて、辺りは随分と荒れて…から、年月が経っていると知る事が出来た。
足場はメイトルパでは終ぞ見た事のない、石とは違う物質で、無機質なそれにまたぱちくりと瞬く。
それからきょろきょろと辺りを見回すも、人っ子1人居やしない。
先程とは反対側に、またこてんと首を傾げたフィエラの第一声は、
「あら?」
そんな間抜けたものだった。
「喚ばれた…気がしたのだけれど…?」
そう呟いた通り、フィエラは召喚されて今ここにいる…筈なのに、召喚した相手もいなければ、召喚された理由すら見当たらない。
フィエラ自身、殆ど召喚された経験がない故に、もしかしたら違うのかとも思うが、違うならば何故?夢遊病?なんて話になってしまう。
判断するに足る情報はあまりにも少なかった。
「あらあら、困ったわねぇ」
そうのんびりと呟いて(独り言の自覚はない)、ふと、上を見上げて驚いた。
パッと抱いた印象は、巨大という一点のみ。
それから暫くはマジマジと眺めて、それが門なのだと漸く気づいた。
「まぁ、立派なこと」
その巨大さにフィエラが単純に感嘆した時だった。
ーーーー…ォォオぉオン…
「!」
『声』が、耳に届く。
近いようで遠く、遠いようで近い、そんなあやふやな『声』が。
他者だったらば、風の音だと言われるかも知れない。
しかし、フィエラは不思議と『声』だと、苦しんでいる者の『声』だと、感じていた。
と、
「ーーーーー…ォォオオオン!」
「!!」
ゆらりと、無機質な足場から、人っ子が1人現れた。
ダラリと下がった手には、剣を持っている、男。
しかし。
「あら、こんにちは」
「…オオォォオォオ…」
どう見ても、意志の疎通が出来る相手とは思えない。
にっこり挨拶したフィエラも、それは直ぐに知れた。
と、言うか、現れた者は剣を構え、臨戦態勢な様子である。
フィエラは困ったわ…と眉を下げた。
と、
「怪我したくなけりゃあ下がってな」
低く唸るような声とほぼ同時、フィエラの横を風が吹き抜ける。
フィエラが瞬きを1つした時には、先程の男は文字通り跡形もなくなっていて、目の前には新たな人っ子がフィエラに背を向ける形で立っていた。
一目見て分かる事は、あまり多くない。
1つは、その者が獣人であると言うこと。
(短いが全身を覆う体毛と、人間と異なるその体躯が、それを如実に表していた。)
1つは、その者が自分を助けてくれたらしいこと。
(かと言って味方とも言えないのだろうけれども。)
そして、
「あらまぁ…」
フィエラが『もふもふ』と称して気に入っている鬣(たてがみ)が、その者の背に立派に生えていたことぐらいだった。
執筆 20110427
もふもふに一目惚れ!
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