Metempsychosis
in Tales of Graces f

Ertragen...side Malik

蜘蛛が駄目なのだと言って気を失ったフィエラを慌てて支え、マリクは珍しくぽかんとした。
何故ならば、これまで遭遇した親玉じゃない寄生虫も、皆蜘蛛の形態をしていたからだ。
今更何故、と考えたマリクは、次いで呆れたように深々と溜め息を吐いた。

「痩せ我慢にも程があるだろう…」

そう。
フィエラはひたすら我慢していたのだ。
まぁ言われたところでどうにも出来ないのだが、それにしても一言知らされていれば、出来るだけ目に触れないように気をつけるなり、出来る事はあっただろうに。
倒れる間際に言ったのは、単純に体調が悪くて倒れる訳ではないと、心配させない為にと考えたのだろうが、そうなるまで言わないとは…、いや、こうまでならなければ言わないなど、随分と我慢の度が過ぎているようにマリクは思う。
思い返せば、ストラタの監視下に置かれると言われた時も、やけにあっさりと了承していたような…。

と、耳に届いた剣戟の音に、フィエラを抱え直して戦況に目をやると、丁度アスベルがミニサイズの寄生虫の最後の一匹にトドメを刺した所だった。
また倒れたフィエラに気づいたシェリアが、血相を変えて駆け寄る。

「フィエラさん、どうしたんですか!?」
「どうやら蜘蛛が苦手だったらしくてな。アレを見て気を失ったらしい」
「あー…」

ありのままを伝えれば、シェリアもあっさり納得した。
先程のアレは蜘蛛が苦手じゃないマリク達にもなかなか刺激の強いものだったのだから、蜘蛛が苦手な者にしてみれば、フィエラのように気を失って当然と言えよう。

とりあえず心配ないだろうと判断して、マリクは改めて辺りを見回した。

「さて、寄生虫の問題は片づいたが、肝心の出口は何処だ?」
「早く親書を届けに行かなくてはいけないのに…」
「お守り、破れちゃった…」

ソフィの言った通り、古かった袋の角が破れ、中に入っていた粉が出てしまっている。
アスベル自身も分からないその粉に興味を持ったパスカルだったが、

「へ、へ……へっくしょい!」

とても妙齢の女性とは思えないような盛大なくしゃみをかましてくれた。
まぁ、とりあえず粉の正体はコショウなのだろうと、マリクはあまり気にしない。

しかし、くしゃみが盛大過ぎた所為で、アスベルの手に出ていたコショウが辺り一面に撒き散らされ、程なくしてグラグラと揺れ始める足元には顔を顰めた。
もちろん、次に来るだろう展開を予想して。

とりあえず、横抱き状態では危険だからと、抱き締めるようにフィエラを抱え直した所で、

「うわ…っ!」

轟々と音を立てた突風に、マリク達は抵抗も出来ずに吹き飛ばされたのだった。




執筆 20110622

ertragen = [独]我慢する

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