Metempsychosis
in Tales of Graces f
Spider
フィエラにこっぴどく叱られるというお座り事件以降、そういった話題が上る事もなく、至って平和に(?)出口を探す事数時間。
かなりの距離を歩き回ったが、やはりなかなか出口は見つからないままだった。
「いつまで進めば此処から出られるのかしら」
「う〜ん、どうだろうね〜。一生ここで暮らす事になっちゃったりするのかな〜」
「パスカル、相変わらず楽しそうね……」
ぼやくシェリアに、パスカルはあっけらかんと笑う。
(お尻云々発言ではないので、もうシェリアも気にしない)
「仮にそうなったとして……、シェリアがお母さんでアスベルがお父さんでしょ。あたしとソフィが仲良し姉妹とかかな〜。う〜ん!ロックガガンの中の家族!なかなかいいねぇ〜」
「ふふふ、本当ねぇ」
「……教官とフィエラは?」
言われてみれば、確かに微笑ましい『家族』の出来上がりで、にこにこと笑っていたフィエラは、こてんと首を傾げたソフィの言葉にきょとりとした。
マリクはともかく、よもや自分まで含まれるとは思っていなかったのである。
そんなフィエラの内心など露知らず、改めて2人をじろじろと見たパスカルは、
「教官とフィエラはねぇ……」
ぽんっと手を打ち、
「……おじいちゃんとおばあちゃん、かな?」
と言った。
「あらあら」
「パスカル!教官はともかく、フィエラさんはまだ若いのに、おばあちゃんだなんて失礼よ。…そりゃあ、フィエラさんが私(お母さん)の『お母さん』なら嬉しいけれど…」
「おい…」
先程のお座り事件によってフィエラに感謝と憧憬を抱いたらしいシェリアが真っ向から苦情を言うが、『ともかく』とか言われてしまったマリクは物凄く複雑な顔をする。
やれやれと溜め息をついたマリクだったが、パスカルの方を見ていきなり武器を構えた。
「パスカル!」
「い、いやだなぁ。冗談だってば。そんなに怒らないでよ〜」
「違う、後ろ!」
「うわあああ!出た!」
「紫色の寄生虫!こいつが…!?」
本気の剣幕にたじろいだパスカルは、マリクの言う後ろ…正確には、背後にあった岩の上に染み出るように現れた紫色の寄生虫に、慌ててアスベル達も武器を構える。
そうして皆が寄生虫(親玉)と戦闘している最中、フィエラはぴったりとマリクの傍にくっついていた。
もちろんそれは今回に限った事ではなく、遠距離戦に長けたマリクならば、敵に接近される前に対応出来るし、万が一接近されそうになった時にもフィエラをひょいっと抱えて離れる事も出来るからと、ラントを発つ前に決めた事だ。
何度か砂漠で盗賊と戦闘になった時には真っ先に狙われたが、結果何事もなく今に至っている。
そして今回も、大分敵の体力を削ってきて、もう少しで倒せる。
そんな時だった。
寄生虫の体躯の大半を占めていた袋状の尾を破り、ミニサイズの寄生虫が、無数に現れたのは。
「〜〜っ!」
フィエラは全身に鳥肌が立つのを感じながら、悲鳴すら上げれずにマリクの服を力一杯掴む。
「フィエラ?」
「マ、リク…さん…」
「!?、顔色が真っ青だぞ、どうした!?」
そう言うマリクの方が血相を変えているのにと思いながら、
「私、だめ…なんです…」
ふらっと全身から力が抜けるのに抵抗も出来ないまま、
「……蜘蛛……」
「おい!フィエラ!」
フィエラは意識を手放した。
執筆 20110622
spider = [英]蜘蛛
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