Metempsychosis
in Tales of Graces f

Schimpfen...side Cheria

「あのね?」

こてんとソフィと良く似た動きで首を傾げたフィエラは、しかして全くの無表情だった。

(…め…めちゃくちゃ怒ってる…っ)

そこに直れと言われた直後に揃ってビシッと正座したアスベルとパスカル、そしてマリクを端で見ているだけのシェリアの背筋を、つーっと冷や汗が流れ落ちる。
3人の前に自らも正座して、フィエラは言った。

「確かに、脱出する方法として有力なのも分かるし、何も出来ない私が口を出してはいけない事なのだとも思うの。でもね」

そこでやっと、シェリアも、怒られている3人も、フィエラが怒っている理由に気づく。
そう。

「お年頃の女の子もいるのだから、ちょっと控えて頂きたいと思うのは、私の我が儘かしら」

3人にとっては何てこともない、脱出方法の1つ。
しかし、はっきりと嫌悪感を示していたシェリアは、フィエラもそうだったのかと気づいて。
3人も気づいたのだろう。
申し訳なさそうに頭を垂れるしかない。

「パスカル」
「う、うん」
「貴女も女の子なんだからとまでは言わないけれど、もう少し周りを見た方が良いと思うわ。貴女は平気でも、貴女の傍に平気じゃない人がいるのだもの」

お風呂に毎日二時間入りなさいって言われたら、パスカルも嫌でしょう?と言われ、お風呂を面倒がるパスカルは、うっと言葉に詰まった。

「アスベル君」
「はい…」
「ソフィは女の子としての自覚もまだ薄いようだと言うのに、今の会話は如何なものかと思うわ。ソフィの保護者を名乗るのなら、もう少し気をつけるようにした方がいいわね。保護者(アスベル君)の発言1つで、子供(ソフィ)がどんな影響を受けるのか分からないのだから」

ソフィが下品な発言をしたり、乱暴な言葉遣いをするようになったら嫌でしょう?と言われ、想像したらしいアスベルはザッと青醒めた。
シェリアだって、そんなのソフィじゃないっ!と思う。

「マリクさん」
「うむ…」
「アスベル君の教官という立場ではなくなったかもしれませんけれど、彼等の中での最年長者である事に変わりはありませんでしょう?それなのに、窘めこそすれ、進んでその話題を振るだなんて…」

確かに先程は、わざわざ伝えてもらう必要はなかったとシェリアも思った。
当人も浅慮な発言だったと自覚したのか、情けない、と言わんばかりに眉を下げたフィエラに、マリクは返す言葉もなかった。

「「「すみませんでした…!」」」

揃って3人を謝らせたフィエラに、シェリアは込み上げる感激に打ち震える。
ロックガガンに飲み込まれて以降、度重なるお尻云々発言に辟易していたのだ。
それをビシッと叱ってくれたフィエラは、天使が舞い降りたかのように神々しく見える。
(先程のかみかみ発言も気にならないくらいに)

「分かって頂けたなら何よりです」

さ、出口を探しましょう。

それまでの怒りっぷりを瞬間消し去って、フィエラはにっこりと笑った。




執筆 20110621

schimpfen = [独]叱る

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