Metempsychosis
in Tales of Graces f

Rescue

目覚めたら、目の前にいたのは美少女だった。

「あら?」
「…良かった…!」

とてもホッとした様子の少女に、きょとりと瞬いたフィエラは、体がが自由になっている事に気づいて、ゆっくりと身を起こした。
周りを見回せば、どうやら旅人が泊まる為の小屋のようだ。
記憶にないので、どうやら運ばれている間に眠ってしまったらしい。

「どこか痛む所はありませんか?具合は?」
「あら、大丈夫ですよ」
「良かった…」

体調に異常はないと伝えれば、少女はぐっと眉尻を下げた。

「ごめんなさい。巻き込んでしまって…」
「あら。あれは私も悪かったんですもの。貴女が気に病む必要はありませんよ」
「でも…」
「でもじゃありません」

尚も謝ろうとする少女にピシャリと言うと、少女はきょとんとして、くしゃりと笑う。

「…はい」

何となく、フィエラは少女の頭を撫でた。
少し癖があるが、豊かで柔らかな髪質は、なでなですると心地良い。
特に嫌がる様子もないのでなでなでし続けていると、

「…って!」
「て?」
「そうだわ!アスベル達が…!」

ハッと我に返った少女が、慌ててて立ち上がるのに、フィエラはきょとりと首を傾げる。

「あら。アスベル君のお知り合いなんですか?」
「あ…はい。幼なじみです…一応…」

複雑な顔で答えた少女はシェリア・バーンズと名乗り、敬語も敬称も必要ないと言った。

何故そんな複雑な顔をするのかは、2人の事情を知らないフィエラが口を出すべき事ではないと思って、敢えて訊かないまま。

「そう言えば、そもそも何故捕まったのかしら?」
「それは…、私が話を聞いてしまって…」
「捕まっている所に私が現れた?」

少女はこくりと頷く。
フィエラはあらあらと笑った。
昨日も思ったが、最近の自分は本当に間が悪い。

「それで、何をそんなに慌てているのかしら?」
「ええっと、あの時の眼鏡の人が」
「あら、レイモンさん…だったかしら?」
「ご存知なんですか?」
「彼は私の尋問をした方だから」
「尋問!?」

不穏極まりない言葉に青ざめたシェリアに、話を訊かれただけだと説明すると、一応納得してくれたようだった。

「その彼が、アスベルがストラタに親書を届けるのを妨害すると言っていて」
「あら、大変ねぇ」

暢気に困ったわねぇと言うフィエラに、シェリアはキリッと顔を引き締めて立ち上がる。

「今は急いで此処から逃げて、この事を知らせないといけないんです」
「そうね。でも…」

フィエラは小屋に1つしかないドアを見て、へにゃりと眉を下げた。
攫って来たのであれば、それなりに見張りもいるのではないだろうか。
それを言うと、シェリアはぐっと言葉を詰まらせた。

「でも、このままでは…!」

シェリアがぎゅっと手を握り締めた時だった。

『そこをどいてもらえませんか』
『この小屋は現在使用を禁止している』
『少しで構わないので、お願いします』

ドアの向こうから、聞き覚えのある声がして、フィエラはシェリアと目を見合わせる。
片方は見張りの兵士として、もう片方の声は間違いない。

「アスベル!!」
『!シェリア!いるんだな!』
『くそっ!』

小屋の中のシェリアに気付き気付かれ、アスベル達と兵士達の争う音が聞こえる。
時々感じる地響きは、もしかしたら魔物もいるかも知れない。
闇雲に飛び出さなくて正解だった。

暫くすると剣戟の音も止み、静かに小屋のドアが開かれる。
薄暗かった中に射し込んむ光が、少しだけ眩しかった。




執筆 20110617

rescue = [英]助け出す、救助

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