〜 03 〜
数日後。
最後のテストが終わった。色んな意味で終わった。
ノクティスの名前を大声で呼びながら教室に入ってくるプロンプトがフィアナを横切る。
「ゲーセンいこうぜー!!テストつかれたー!!」
「結局お前、期間中ずっとそれ言ってたな」
「もうテストなんて無くていいよ…」
他愛のない会話と共に席を立ち上がるノクティスにフィアナは後ろから近寄った。
「ノクティス王子!」
もう呼び止めるのも随分と慣れたものだ。いつの日かのようにノクティスとプロンプトが振り返ると、フィアナは少し緊張しながら手に持った小包を差し出した。
「これ、手作りなんだけど…」
「いらねーよ」
「うっ」
ノクティスの言葉が自分の言葉に被せてきたせいで、若干聞き取りにくかったが断られたことがわかった。
数日前、大きな建物…最寄りのデパートで食材を買い込み、自信作のアップルパイを作ってテストお疲れ様という意味合いを込めてノクティスに渡そうと思っていた。
焼きたてを食べてもらいたくて、朝早く起きて作ったのだ。
最も今、それを渡せずに終わりそうだが。
考えてきた作戦その1は想像通り失敗に終わった。作戦その2に移行する。
「……か、彼女のお菓子が好きだからっ、ですかっ!?」
一番聞きたかったこと。これの真相を明らかにしようと思い、睡眠時間を犠牲にした。というより、眠れなかったと言ったほうが正しい。
「彼女のお菓子?」
「あの人が作ったやつのことじゃない?」
横に居たプロンプトが、首をかしげながらフィアナの言葉を復唱するノクティスにそう言った。
「あー。んー。ノーコメントで」
「ちょっ…!」
一番はっきりしない言葉が返ってきて、フィアナは愕然とした。
「とにかくそれいらねーから」と言いながら背を向けるノクティスの背中を見て、フィアナの口から必死な言葉が出る。
「あっ、ま、待って!プロンプトくん!」
「えっ!?オレっ!?」
フィアナと自分より一歩先にいるノクティスを交互に見ながら、プロンプトは戸惑った様子を見せた。
プロンプトに近寄って、その小包を渡す。
「これ、プロンプトくんにあげる」
「えぇ?でもこれノクトのために作ったんじゃ…」
「いいの。プロンプトくんの分も作ってあるから」
半ば押し付ける感じでプロンプトの手に渡すと、未だ戸惑いながらフィアナにお礼を言った。
ノクティスではないとはいえ、受け取ってもらえたことが嬉しくてつい笑顔になる。
「それ、自信作!味わって食べてね!」
そう言うとフィアナは友人たちのもとへ行ってしまった。
ノクティスは何も言わずに教室を出る。それを見たプロンプトは手に持った小包を大事に抱えながら慌ててあとを追った。
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