猫の手も借りたいときになぜいない 朝起きると、床で眠っていたはずのなまえが居なかった。今日は大事な訓練があるっていうのに、何をしてやがる。その訓練が始まっても一向になまえは姿を見せない。 「おいハンジ、なまえはずいぶんと長いクソをしているようだが」 「ああ、なまえ?なまえなら今日の朝方救護室に行ったみたいだよ。昨日から具合が悪かったらしいけど、迷惑をかけたくないからってリヴァイには何も言ってなかったんだね、彼女。ずいぶん気を使わせてるんじゃないの?一緒に生活しているみたいだけど手出しちゃだめだよ、年齢が離れすぎてる。それに、」 「うるせえ、いいかげんにその口を閉じろ」 とりあえず救護室へ行くか。それにしてもあのガキ、具合が悪いなんざ俺は一言も聞いていないぞ。くそ、何をこんなにイライラしているんだ。・・・ああ、そうか、このあとにある大掃除の人手が足りないからイライラしているのか。ただえさえ少ない人数だというのに、一人でも欠けると色々と面倒なんだ。 救護室に着くと、ベッドに眠るなまえとエルヴィンが居た。その状況になぜか胸の痛みを感じた。俺を見たエルヴィンが立ち上がる。 「・・・エルヴィン」 「ああリヴァイ、彼女を見ていてくれるか?昨夜から頭痛が激しいらしい」 「は、たかが頭痛だと?それごときで俺が見る必要もない」 「私たちにはわからないよ、きっと女性特有のものだろう」 「・・・チッ」 エルヴィンの座っていた椅子に腰を下ろした。・・・椅子に温度が移っている。きっとエルヴィンはずっとここにいたのだろう。自分の仕事も後にして面倒を見るなんて、ずいぶんと能天気な奴だ。 「それにしても、綺麗な顔をしている。君が惚れ込むのもわかるよ」 「・・・あ?」 強く睨みつけると、エルヴィンは苦笑いを残して踵を返した。・・・馬鹿な、笑える。俺がこんな小娘に惚れているだなんて。あのエルヴィンにしては最高の冗談だ。 ・・・ただでさえ人手が足りない、なんてことはわかっている。ただこいつを見ているとここから離れたくないような・・・そんな気がして、なまえの顔を見つめたまま脚を組み替えた。 20130709 ×
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