生徒会長受け2 | ナノ

執事×生徒会長


黒スーツの男が、屋上に颯爽と降り立った。
俺はその様子を生徒会室の窓から見ていたが、遠目からでもあのモデル体型は椎原とわかる。
何人もの生徒が、目の前で起きている珍事を覗いていた。


「お久しぶりです、雷雅様」

事務員や先生方をあたふたさせつつも、椎原は俺の前でゆっくり丁寧に挨拶した。
怒り狂っているのを感じさせない表情の裏で、青い炎がメラメラしているのには俺しか気づいていないだろう。

ド派手な登場を感じさせない、静かな言動で周囲を納得させていく。
「ええ、理事長に呼ばれて来ただけなので、本当にお気づかいなく」
爽やかな笑顔で困惑や動揺を鎮めつつ、生徒会室に俺と二人になるように仕向けるのだった。

パタンと扉が閉められ、俺と椎原は対峙した。
「とりあえず三郎に連絡する…ベンツはどうした?それに仕事を投げ出してどうする気だ?」
「それなら飛行場に乗り捨ててあります。風が強く砂埃が酷かったので、洗車するよう……それと今月の私の仕事は全て三郎任せる、と報告ついでに言っておいてください。お願いいたします」

哀れ父のベンツ。哀れ見習い三郎。
俺は携帯を開き、実家へ電話をした。三郎が電話口で「そんなぁ…酷いっす」と呆けている。

椎原はキョロキョロと生徒会室を見回した後、役員達の机をつーっと指で埃の厚みを確認していた。
「他に何か言っておくことはあるか?」
「いえ、後で…三郎以外には、自分で電話しますので、大丈夫です」
三郎には言い逃げする気満々の態度に、俺はもう一度心の中で三郎に同情した。



「雷雅様、授業をサボっているとお聞きしましたが…本当でしょうか?」

電話が終わり一息ついた後、怒っていることをひしひしと感じさせる笑顔が迫ってくる。これは…塾をサボって遊んだ日以上の怒りだな。
詰め寄る椎原から目を逸らさずに答える。

「事実だ。この一週間は、教室にすら行っていない」
「…それは学生の本分を蔑にしていると…雷雅様はもちろん理解しているのですよね」
「十分承知している。だが…生徒会長を引き受けると承知したのも俺だ」
「では、このような状況…になってしまった原因をお教えください」

椎原は難しい顔をしながら、俺から理由と詳しい現状を聞きだしていく。
きっかけは編入生が来たことだった。次々に編入生の奇抜な…もとい斬新な発言に役員達が傾倒していくのを黙って見ているしかできなかった。
次第に仕事を投げ出し、そして部屋に顔を見せなくなっていく。全員が授業も業務もサボって遊んでいる報告が風紀から回ってきたときには絶望した。

「雷雅様の学業を邪魔するだけでなく、やはり本人たちも学生としての本分を忘れているのですか」

椎原がため息の後に「なるほど」と頷いたときに、バタンと大きな音がして生徒会室の扉が乱暴に開けられた。

「あー!お前がヘリコプターから降りて来た奴だな!!」

騒々しい声が編入生。そして後ろには、久しぶりに顔を見せてくれた生徒会役員も勢ぞろいしていた。




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