生徒会長受け3 | ナノ

執事×生徒会長


「皆さま、はじめまして。園城寺の執事をしている椎原です」

恭しく一礼し名乗った椎原に対して、全員が押し黙ったまま立ち尽くす。園城寺の執事が学校にやってきたことに青ざめている。
執事と言えども、園城寺が学園に介入するということは、自分たちの愚行を処分されることに繋がるからだ。
しかし目をキラキラと輝かせた転入生は、周囲の反応には目もくれずに椎原にまとわりつく。

「……俺は松原大だ!友達になろう!お前の名前は何だ!」
「私の名前など、どうでも良いのです」
転入生の叫びを椎原は笑顔で一蹴する。
しかしKYと名高い転入生はギャーギャーと喚き始める。


「何故…園城寺の執事がここに…」
副会長の呟きに力は無かった。ぽそりと出たか細い声に、椎原は笑顔で向き合った。

「それは、雷雅様の学業に支障が出ていると聞いたからです」
知っていましたか?と問うような口調に、責められていないはずの俺の背筋がゾクリとする。
その原因である全員はより青くなり、椎原の鋭利で厳しい眼差しが向けられていた。

「それはっ!!雷雅が悪いんだ!だってセフレと遊んでばっかりいるんだ…!」



ピピピピ ピピピピ

「もしもし?はい、到着しております。……ええ…」
転入生の妄言を華麗に無視し、椎原は通話を始める。
セフレの話は俺の耳にも入っていたが、椎原に伝わってしまい、俺は面倒臭いことになったとため息をつく。


無視と通話に対して転入生が再び喚き散らすが、椎原は通話口を覆って無視。他の役員達はまだ現実に戻れていない…何ともカオスな状況だ。
「では後ほど―――――失礼いたしました」
ピッと通話を切った椎原は一応皆に向けて謝ったが、その目から怒りは消えていない。

「本当に失礼だぞ!!俺が話しかけてやっているのに、無視するし…電話するし…」
「では軽くですが、松原様の今後についてのお話をさせていただきます」
「大って呼べよ。もう俺達は友達だから…で、何の話だ?」
「はい、大様はこの学園からの退学が決定しました。その後については、ご両親からお聞きください」

理事長の親戚と威張り散らした転入生だったが、呆気ない退学通告に意味が分からず黙った。喋れない転入生は初めて見たかもしれない。

「そ、そんな!叔父さんが許すはず無い!」
「ええ、先程の緊急理事会で理事長の罷免が決まり、その後に大様の学力不足と数々の問題行動による退学が決定しました」

俺を含め誰もが椎原の独壇場に着いていけない。
役員達は最大の理解者と心酔していた転入生の処分に目を丸くした後、明日は我が身と青くなる。
一人だけ笑顔の椎原は、時計を一瞥した。



ガラッ


生徒会室の扉が勢いよく開き、ドカドカと何人もの大人が入ってきた。
「坊ちゃま!」「透!!」「裕貴!あんたってやつは!」
それぞれが役員の元に行き、叱責を始める。
腹黒副会長には屈強なおじいさん、寡黙書記にはたぶん父親、チャラ男会計にはやり手社長で有名な姉が説教を開始していた。

もう転入生はへなへなと座り込んで泣き叫んでいるが、役員は誰ひとりそれを宥めるどころではない。

「皆さま、ここでは色々と不便もあると思いますので、寮の部屋へ移動しましょう」
椎原がパンパンと手を鳴らして、移動を促す。全員が首根っこを掴まれたまま運ばれていった。
その間抜けな姿に同情はするが、明日の学内新聞の一面は決まったようなものだ。

「大様を強制的に移動させますので、雷雅様も寮にお戻りください。後ほど、またお話しましょう」

先程と同様に、転入生の首根っこを掴んで歩きだす。
「離せー!このっ、手を離せ!……雷雅!!助けろ!!」
どんなにもがいても、その手から逃げられないと俺は知っている。


椎原が会釈して、丁寧に扉を閉めて出ていった。。
「あいつらが部屋に来てから…俺は一言も喋ってない」




[*前] [次#]

←MAIN
←TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -