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たり。


冷や汗が伝う。
何度も自分の置かれた状況を把握しても意味の分からないことは分からない。あのベルが私の膝の上に乗って、先輩のことを聞いている。どうしてこうなっているというのだ。
顔が赤いのは自分が一番よくわかっているし心臓がやけに早い。初めて任務をするときのようなあんな期待に満ちた早鐘なんかじゃない。
彼がこんなに近くに居ることなんてここ最近は滅多になかったというのに。ベルのせいだ。


『…お前、あいつのことどう思ってんの』

名前を言わずともそれが誰を指しているかなんてすぐに分かった。スクアーロ先輩に対して私がどう思っているかって?何を言っているのか分からない。私が彼に対して何かよからぬことを思っているのかと疑っているのであればそれは大きな間違いだ。
確かに私はスクアーロ先輩の事を最初こそ怖くて苦手な声の大きな人だと思っていたし自分の手首を切り落としただなんて聞いた時はある種の狂気さえ感じて最初は目を見て話をすることすら緊張していた訳だけど今はそんなことは更々ない。これっぽっちもない。安心のできる作戦隊長の先輩のことを私は誇りに思っている。
それなのにベルは私のこの信頼を、忠義を疑っているというのだろうか。


「…疑っていると、いうの」
「は?」
「私はあの時、檻から出たあの時からここの組織に命を預けた。貴方達を裏切るなんて…っ!」

突然視界が目まぐるしく揺れ動いた。
何てことはない、ベルが私の両肩を掴んでベッドへと押し込んだのだ。危うく自分の舌を噛むところだった。
文句を言おうと半身を再度起こそうとするも彼の力は事の外強くびくともしない。

どうして、そんな。

訳の分からないことを聞いてきたのは、私の話を中断したのはベルだというのにどうしてベルが苛立った顔をしているのか分からない。


「っ」

背中に、先程ベルに向けた銃が置いてあるのを忘れていた。
安全装置が外されているそれはもし暴発でもしてくれたら私の内臓なんて軽く持っていってしまうだろう。引き金を引くだけ。それでも今私の命を脅かしている危険な銃をどうにかすることより、何故か目の前にいる彼のこの表情の方が心臓を掴まれているような気がしてならないのだ。
分からない。何でそんな顔をしているの。私が何をしたっていうの。


「そんなのが聞きたいんじゃねーっつうの」

何もかも、分からない。
淡々と紡がれたその言葉とは裏腹にどうして彼がそんな表情を浮かべているのか。何を溜めて、何を私に言いたいのか。


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