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り。


準備は万端だった。頼むぜ魔法の白い粉。
マーモンに破格の値段で買わされたその薬はどんな人間でも一発で深い眠りにつかせることができるっていう便利モンで、俺としては寧ろそれに痺れる効果や媚薬的な効果が付いていた方がいいって追加で注文したってんのにそんな何でも性能のモノを新米の幹部に飲ませたらそれこそ死んでしまうよって鼻で笑われた。金をとるマーモンが断るぐらいだし、この睡眠薬はそれほど効果のあるものらしい。

連日連夜、任務に駆け回ってたユエが飯を食ってる最中にそれを盛り込むのは馬鹿みてーに簡単だった。だってあいつ俺たちが相手だったら何の警戒もしねーんだもん。何だったら最近は俺の傍でも平気でぐーすか寝てるしほんと勘弁して欲しい。ま、その所為で俺こいつの寝顔がまた見たくなってマーモンに金払ったってのもあんだけど。

――だってんのに、さっきまで普通にボスとかスクアーロと普通に話してたしこいつは神経がオカシクなっちまってんのかと思った。いやいつからか本当に可笑しくなったかも。
ただの雑魚みたいだったユエが突然めきめきと頭角を現し始めて幹部になったって聞いた時はマジで衝撃が走ったワケ。
だってこいつ、弱いじゃん。幹部ってーのは王子みたいな天才かボスに忠義尽くしたヤツか、金にがめついヤツかのどれかだし。あいつどれにも当てはまらねーし。正直ちょっとムカついたってのがあった。でもそれよりもユエの寝顔が見たくなった。いつもスカしてるくせに寝てる時のアホ面は面白いし。

薬を盛ってから、1時間。本当にマーモンから買った薬が睡眠薬なのか心配になってきた頃、とうとうユエに異変が襲った。スクアーロと話している最中に突然、こっくり。諦めてゲームしてる時だったからスクアーロが「おい!」って焦ってあいつを揺さぶってる姿をじっくり眺めている間に手元の主人公は死んでた。ラスボスだったけどいいや、セーブしてあるし。


「疲れてんじゃねーの」
「まあ、そうだろうが…くそ、こいつ口にケチャップついてやがる」

スクアーロの白いワイシャツにユエのキスマーク。口紅じゃなくてケチャップ。色気ねーったらありゃしない。優しい先輩殿はそんなこと構いもせずそのままついでとばかりにその白いシャツでユエの口元を拭うと仕方ないと溜息をついてそのまま自分の膝にユエの頭を乗せてコートをかけた。

めらり。
何だこれ。俺今何を思った。俺はこいつの寝顔を見たかったけど、皆に見せたいわけじゃなかった。アンビリーバボー、これは予測できなかった事態だ。


「俺部屋に連れてくよ」
「…お前が、か」
「しししっ、だって新人見るのが俺の役割だろ?」

瞠目した様子でこっち見る先輩、ほんとは俺の考え見抜いてんじゃねーかってぐらいたまに鋭い。ほんとめんどくせー。


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