UA36

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多分、きっと。




「おい都!てめぇ何でんな毛抜けんだよ!?犬かお前は!コロコロしろよ!」
「え?あ、ごめん俺ちょー髪の毛多いんだよね。コロコロしとく」

夏休みに入ると、俺も街中の古着屋でバイトを始めた。凌ちんも家の喫茶店の仕事に明け暮れて、二人暮らしはまぁ何とか上手くやれていた。 そうは言ってもいつまでも居座る訳にはいかないし、それでもやっぱり家には帰れない。かといって部屋を借りれるだけの給料は貰ってない。

やっぱ、またその日暮らしするしかないよなぁ。

「あ、凌ちん今日俺知り合いんとこ泊まるから」
「どこの誰だよ?」

コロコロしながら振り返ると、凌ちんが怖い顔で俺を見下ろしていた。凌ちんって、いい奴だよなぁ。何かもう真っ直ぐで嘘偽りない感じ。多分、兄弟とかいたらこんな感じかも。

「いや、普通に大学生の女の子。巨乳の」
「そうかよ。何かあったら俺を呼べ」

いい奴、だよなぁ。顔ちょー怖ぇけど。愛想悪いし、ヤンキーだしアホの子だけど。ま、そんなのにいつまでも迷惑かけて心配掛ける訳にもいかないか。

「俺さぁ……学校辞めて働こっかな」
「あ!?駄目に決まってんだろ。俺はどうすんだよ」
「……何が?」
「どうやって俺が学校行くんだよ、ぶっ殺すぞ。つーか別に此処に居りゃいいだろうが!お前ちょっも気ィ使いすぎ。何の為にいつまでもトモダチやってると思ってんだよ」
「……何の為?」

凌ちんが口ごもる。

「こ、困ったら助け合えんだろ。つーか俺もうバイト行くから。お前鍵ちゃんとしとけよ!」

あ、逃げた。

「行ってらっしゃーい」

バンッとけたたましく凌ちんがドアを閉めて出掛けてしまう。やっぱ、凌ちんってスゲーツンデレ。あんな怖い顔してあんな可愛い事ばっか言うんだから飽きないよなぁ。

コロコロしながら、思わずニヤける。

学校が好きだった。それは否応なくそこには必ず居場所があるから。それは此処にいてもいいんだって、酷く安心した。
家族ん中には居場所なんかなくって、家は苦しくって、女の子達と遊んでても首輪で繋がれたっていつも宙ぶらりんで怖いままだった。

此処にいてもいいって言ってくれる奴がいるんなら、多分きっと何処でだって生きていける。

多分、大丈夫。


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