NAO
…あ、凌に貸すって約束してたDVD渡すの忘れてた。別に後で会った時でも良いのだけど。もしかしたらもしかして、このDVDをネタに話盛り上がるかも、なんて思って行動にうつした私がバカだった。
いま私の視界に映ってるのはなに?
隣のクラスの可愛いって有名なコと、凌、が
キスしてる光景を目にして一瞬時が止まった気がした。
我に帰ってその場を離れようとしたその時、手からDVDが滑り落ちてガシャン、と音を立ててしまって。慌てて拾ったけどそれでももう遅い。
音に気づいたふたりがこちらを見てるのが、顔をあげなくても分かるから。顔を俯けたままUターンして走って、逃げる。
やだ、やだやだやだ!
なんで好きな人がキス、してるとこなんて目撃しなきゃいけないわけ?!
そ、そりゃ凌がチャラいのは今に始まったことじゃないけど。それでもそういう事をしてるのを見るのは初めてだから、頭が追いつかない。涙が溢れてきて前が霞んでよく見えないしもう、やだ。
闇雲に走って人気のない階段裏まで来たとこでしゃがみ込んで 膝に顔を埋めた。
辛いだけの片思い。もうやめたい。
今まで何度もそう考えたけど、
でもまたあの笑顔で心、って呼ばれたら
好きな気持ちが蘇る。
諦めたくなると優しくする凌は、ズルい
諦めきれない恋
諦めさせてくれない恋
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