トモダチ
「凌ー、朝だよぉ」
「あ?」
女の声でまだ重い瞼を開いてスマホを見れば、まだ朝7時前。ふざけんな。思わず舌打ちが出るが、二度寝する気にもなれなかった。
腰にまとわりついてくる女を押し退けて、リビングに移動して煙草に火をつければ徐々に意識が覚醒してきた。
ここ何日前から関係を持ったこの女はもう既に身支度は終えて朝飯の用意もしてたらしい。
「じゃー私仕事行くねぇ?」
「あぁ。」
去り際にキスをされ、ガチャンと扉が閉まる音が部屋に響く。
…つーか、俺朝飯食わねーんだけどこれどうすっか。数分思考し、結果弁当に詰めて昼に食う事にした。食い物に罪はねーし。無駄にはしない。
それから身支度も済ませて学校に着き昇降口で靴を履きかえていると後ろから声を掛けられた。
「っ、凌!おはよっ」
「心、はよ。」
振り返れば心で、わざとわしゃわしゃ頭を撫でてやりながら挨拶を返し階段へと向かえば後ろから「ちょっと!凌!」なんて不満げな声が聞こえてくる。
周りにいる女でこうやってふざけたやり取りすんのも、手を出してないのもコイツだけだ。媚び売ってきたりしねェし、一緒に居て楽だから。
それを壊すことはしない。
この気持ちが変わって、いまの関係をぶち壊したくならない限り。
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