戸惑い
「やだ、凌のえっち」
「あ?そういうのを期待してんじゃねェの?」
そいつはクスクスと笑いながら俺の唇を食む。
身体に手を這わせようか、なんて考えながらキスしてたらガシャン、と何かが落ちる音がして。先公だったらめんどくせーななんて音のした方を見れば、顔を俯かせてDVDのケースを手に立ってたのは心だった。
いつもなら別に何も思わないのに、この焦るような、弁解したくなるような気持ちは何なんだろう
顔を俯かせたまま走り去る心を見て、そんなことを思った。
「ふふ、見られちゃったね?続きシよ?」
「あぁ」
よく分からない、芽生えた気持ちを誤魔化すように女の唇に噛み付いた。
気持ちを隠すように
未だ分からない感情を無いものとするように。
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