キスしていい?/リマセブ
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学生リマセブ



図書館の最奥、明るいとはあまり言えない。
ひとけも少ない。
とっても静か。
そこを僕は好んだ。

「セブ」

名前を呼ばれ、本から目を離し顔を上げる。
そこには、ルーピンがいた。
継ぎ接ぎだらけのボロボロのローブを身に纏い、こちらを見てにこりと笑う。
その笑顔は何時もどこか寂しげだ。

「またここにいたんだ。」

僕は1日の大部分をここで過ごすため、来ればほとんどの確率で会える。
と言うことをルーピンは知っている。
よいしょ、とかけ声をかけながら隣に腰掛ける。
もともと広くはない場所なので、二人も座ればゆとりは無くなってしまう。

「何をしにきた」

隣に向かって声をかける。
こいつが来たことにより、ゆっくり本を読むことができなくなることを今までの経験で知っているため、ぱたりと本を閉じる。

「セブ、セブルス…」
「なんだ」

その僕を呼ぶ声はなんだか不安が絡んでいるようにきこえた。

「セブルス…セブルス、セブ……」
「なんだと聞いているだろう。」

人の名前を繰り返すだけの隣の人間に再度話しかける。

「セブ、好き、だよ。」
「………」
「好き、大好き。」
「………」
「たとえ君がどんな人だろうと、僕は君のことが好き。」

こいつと僕とは恋人である、というと些か不自然な感じがするが、事実である。
ルーピンは僕を好いているし、僕だって、そういう、…ことなのだ。
だがこうも改まって熱心に思いを告げられると困ってしまう。
羞恥心と、罪悪感に心が締め付けられ何も言えなくなってしまう。

「ねぇセブルスは僕のことが好き?」

黙ったままの僕の頬に手を添え、向き合わせる。
正面から見るのが恥ずかしくて反射的に目を背ける。
その行為にルーピンは少し寂しそうな顔をした。
ああ、そんな顔、してほしくない。

「セブ…?」

尚も黙ったままの僕に再度問いかける。

「好き」

ぽつりと言う。

「僕、も。ルーピンのことが、す、き…」

あああ、顔が熱い。
何を言わせるのだこいつは。
でもその答えに納得したのかルーピンはにこりとはにかんだ。

「ねぇセブルス?」
「今度はなんだ……」
「…キス、してもいい?」

その申し出に僕は一瞬だけ目を見開きルーピンを見つめた。
でもすぐまた俯いて目を逸らす。
もう頬ではなく、肩に手を置かれていた。

「誰か、来る…」
「誰も来ないよ」
「こんな所じゃ、見られてしまう…」
「誰も見てないよ」
「もしかしたら、万が一…」
「セブ、…嫌?」

曖昧な表現で逃げ続ける僕に、悲しそうな目で訴える。

「嫌、という訳ではない、けど、」
「………」
「る、ルーピン、」
「何?」
「どうして僕と、きす、したい、んだ…?」

羞恥心と戦い、つっかえながら聞き返す。
きっと顔は真っ赤なのだろう。
赤面しない薬はどうに作るのだろうか。

「…それは、君のことが好きだからだよ」

優しくふわりと答える。
まっすぐなその気持ちにまた罪悪感が心を締め付ける。

「………」

少し顔を上げ、ちらとルーピンの目を見て、静かに瞼を閉じ、受け入れる体制をとる。

そして、唇を重ねた。

最初は浅い、触れるだけのキスを。
そして徐々に深くしてゆく。
回数を重ねるごとに心は締め付けられ、『切ない』と形容できる気持ちへと変わっていく。

罪悪感と恐怖が。
いつかルーピンを裏切ってしまうという根拠の無い罪悪感と、
いつかルーピンに裏切られてしまうという根拠の無い恐怖に。
でもルーピンを愛しく思う気持ちがそれを打ち消そうと葛藤する。
その葛藤を一人では耐えきれないため、流涙という行動を体が行う。
はぁ、はぁと自分の吐息と混ざってルーピンの息遣いと舌の絡み合う水音も聞こえる。
その音に反応してしまい葛藤が一層激しくなる。
涙は尚も止まらない。
―きっといつかこの音も聞けなくなる。
涙が、キスをするたびぽたりぽたりと滴った。

「あ、ゃ…も、やめて…」

やっとのことで出した声は、蚊の鳴く声より細く、震えていた。
これ以上キスをすると、きっと僕の心は壊れてしまう。
はぁはぁと荒い息を整えようと酸素を深く体内へ吸い込む。
急に大量の酸素が入ってきたため、脳が処理しきれずズキズキと痛み、意識が朦朧とする。
思わずふらついて、ルーピンの胸へと寄りかかることになってしまった。
はぁはぁと忙しく息をする僕の髪をルーピンがそっと撫でる。
制止をかけようと伸ばした腕は、志半ばでルーピンの右手へと捕まれてしまった。

「やめ…僕、の髪…」
「綺麗な髪だよ」
「なに、言って…」
「量が多くて艶があるから、そう見えるだけで、セブの髪は、本当はとても綺麗だよ。」

そう見える、と言うのはおそらく僕が言おうとしていた、『あいつ』の、言葉。

「呼吸、治まった?」

その問いにこくんと小さく頷く。
はぁはぁと喘がずとも、もう浅く静かな呼吸ができるようになっていた。

「本当に君はキスが下手だね」

くすり、と小さく笑いながら言う。

「そんなに息があがるかい?」
「っ……五月蝿い」

確かに僕はキスが下手だ。
舌を上手く使うことができないし、息も上手く吸えない。
ただ、ルーピンに翻弄されるだけ。

「セブルス…」

ぎゅっとルーピンの手の力が強くなり、捕まれていた左手にどくどくと脈打つ感覚がはっきりする。
撫でられていた頭もそっと引き寄せられた。

「セブルス」

もう一度名前を呼ばれる。
切羽詰まったような、必死な感じが交ざっている。

「…何を、そんなに焦っているのだ」
「え…?」
「今日はなんだか、その、…慌てていないか?」
「…そんなことないよ。」
「満月が近いからか?」

その言葉に、ピクリと反応を示す。

「でも、まだあと7日はあるではないか」
「……そうだね」
「ルーピン…。」
「…何?」
「…お前は何か勘違いしていないか?」
「勘違い?」
「ああ…。お前が僕を、どんな僕でも受け入れてくれるように、僕も、どんなルーピンでも受け入れている…。」

呟くような会話だ。
お互いがお互いの声を聞き零さぬよう、聴覚を意識する。

「じゃあ………。じゃあ、何で泣くの…?」
「それは…」
「僕を信じていないから何でしょう?」
「それは………!…違う……。」
「じゃあ、何故…?」

ぐっとお互い息をのむ。
ルーピンは次に発せられる僕の言葉に集中しているようだ。

「り、」
「…り?」
「り、り、り、…りーま、す」

名前を呼ぶだけでこんなに恥ずかしいなんて。

「リーマス…」
「…うん?」
「リーマス、好き、だ。好きなんだ。君が好き。きっと君が僕を想っているよりも、もっともっと、僕のほうが、好き。」
「…うん」
「だから、怖い。リーマスが、居なくなってしまうのが、怖い。いつか僕は一人になると思うと、怖いんだ…」
「セブルス…」
「………」

また涙がでてきた。
泣き顔を見せまいと、顔を背けてリーマスの胸にうずめる。
優しく、リーマスの手が僕の頭を撫でているのを感じた。

「セブルス、僕はどこにも行かない。君を一人にしないよ。大丈夫…」

その言葉は、自分に言い聞かせている感じがした。

「でも…」
「でも?」
「リーマスが、ずっと側にいてくれとしても、僕が…僕のほうが君を…」
「セブルス、それは無理だよ」
「え…?」
「言ったでしょ。僕はどこにも行かない、君を一人にしない。だからね、セブ。君がどんなに遠くへ行こうとも、必ず君の隣に僕がいるよ。」
「リーマス…リーマス、」
「だからもう泣かないで、何も心配すること無いから…。」
「リーマス、………愛してる。」
「…僕もだよ、セブルス……。」

ぎゅう、と痛いほどお互いを抱く。
これが夢ではないように、現実であるようにと願ながら。

「じゃあ、リーマスも、そんな顔は、しないで。」
「そんな顔?」
「いつも寂しげな顔をする…。」
「そうかな…?」
「そうだ。…僕がいるから。…寂しく、ない。」
「……うん。そうだね。」
「ああ、そうだ……。」

抱きついていた僕をそっと離し、少し見つめ合う。
お互い恥ずかしくなり、僕は顔を背け、リーマスはへらっと笑った。

「セブルス、」
「何だ?」
「キス、しようか」

今度は涙を流さずに。




‐‐‐‐‐‐
ここまで読んでいただきありがとうございました!
それとお疲れ様でしたw
今まで書いた中で一番長いです。
でも書いてて楽しかったです。
だがセブを泣かしたリーマス…許すまじ……。
チョコ全部食ってやるバリバリ

長編というわけではないけれど、ストーリーが頭の中でできているので、しばらくリマセブいちゃいちゃが続く予定wwww
黒犬やら主席やらも出てきます。
マグル出身のあの子が一番はっちゃけます←



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