赤い騎士 | ナノ



58



(有人視点)


居間に続く長い廊下を進み、自分の身長の何倍もある重く大きい扉を開ける。



「た、ただいま帰りました、父さん」
「おお、おかえり、有人」



仕事をしているはずの父さんが居たことに驚いたが、更に驚いたことは



「おかえり、有人」



少し弱々し気に、こちらを振り向いたディルと



「お、おかえりなさい、?」



誰か分からない人が、ディルの隣に座って笑っていた。



「有人、覚えていないか?
ボンゴレ財閥の沢田綱吉くんだよ」
「どうも、お久しぶりです、坊っちゃん」
「うわぁ、綱吉が真面目とかキモチワルイな」
「(ディル、後で覚えてろよ?)」
「な、なんか悪寒が…」
「大丈夫か?有人?」
「あぁ…」



ボンゴレ財閥、って、本拠地をイタリアに置いてる

世界規模で有名な資本家じゃないか。

沢田、綱吉か…聞いたことのあるような、ないような。

俺とそうたいして変わらないような歳に見えるけど。



「あ、ディル…大丈夫なのか?」
「ん? なにがだ?」
「だって昨日、…」



―――――居なかったじゃないか。



そう、言葉を続けようとしたはずなのに

自分の口からは出てこなかった。


やっぱり本人が言わない限り

聞かない方がいいんだろうか。



「嗚呼、なんだ有人、心配してくれたのか?」



俺は凄く悩んでいたことが馬鹿みたいに思えるほど

ディルは驚いた反応をした後、笑い始めた。



「わ、笑い事じゃないだろ?!」
「いやー、嬉しいよ
うん、私は全然大丈夫だから」
「ディルが俺達以外に懐かれるなんて、珍しいな」
「失礼だぞ綱吉
私だって人間だ」
「はいはい」



ディルはいつも通り、だった。





 




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