赤い騎士 | ナノ



55




「まだまだ若いねバンビーノ、
どんな時でも経験がものを云うんだ」
「なに言ってるのさ
ディルさんだって、十分若いじゃん」
「おー、お前お世辞なんて言えるのか」
「ふん、馬鹿にしないでよね」



地面に膝をついて、両手を上げた全身傷だらけのトレイズは

疲れ切った表情で私を見上げた。



決着こそは着いたけど、コイツは馬鹿だから。

懲りずにまた、私を狙いに来るんだろうか。


そうなったら面倒だな、と暢気に構えていた私は、トレイズの瞳に何かが映ったのが見えた。


刹那―――――、


ドガッ!



「「いっ……てぇえええッ?!!!」」



「こんのッ馬鹿野郎共が!!!」


なにが起こったのか、理解出来なかった。

でも、視界に映る蜂蜜色が揺れているのが、現実を教えてくれていた。



「つ、綱吉…」
「ボンゴレぇえ?!!!」
「うっせー、ちったぁ静かにしやがれ」



なんで綱吉がここに。

しかもマジギレの。


嗚呼、応援要請頼んだんだった。

ボンゴレ自家用ジェットをぶっ飛ばしてイタリアからやってきた綱吉は

この辺り一帯を幻覚で覆い、騒音をカバーしてくれたこと。

壊れた建物が直るまで、ボンゴレの要員がカバーしてくれること等、早口で言った。



「お前のことだから
1人で突っ込んで行くだろうと思ってさ」
「さすがボス
仕事がはやいな」



さっきまでは怒り狂っていたのに

すぐにまたいつもの調子で、話しだした綱吉に

私はデコピンをくらった。



「綱吉加減をしろ、加減を
私は怪我人だぞ」
「怪我人は黙って人の言うことを聞くべきだと思うけど?」
「こんな仕打ちさえなければ
素直に聞くさ」



ふざけあいながら、綱吉と話していると、トレイズが徐に両手を綱吉の方に突き出した。



「捕まえてよ、ボンゴレ」



一年前、庇ってくれた綱吉を、瞳に復讐の炎を煮えたぎらせて、見ていたトレイズは

今や絶望に満ちたような、深い闇に染まったその瞳に綱吉を映した。



「それは、聞けないな」
「! な、なんでだよ?!」
「お前は、まだわからないのか」



―――――生きるチャンスをあげてんだよ。



「い、いきる…チャンス、」
「お前の負った傷や、心の闇は深いかもしれない
でもな、俺は、俺たちはマフィアだ」
「…」
「いつ死ぬかもわかんねぇ」
「あ、あたりまえだろ」
「だから、てめえには覚悟が足りないって言ってんだよ」
「あ?!」
「俺たちは人間だけど、人間を越えなきゃいけねぇ
それには、とりあえず人間にならなきゃいけねぇ」
「意味わかんねぇし、」



綱吉が、マジギレする姿は、久しぶりに見た。

確か、私がボンゴレに入ることになる前も、綱吉が私に叱ってくれたなぁ。





―――――マフィアは甘くない。

命よりも仕事が優先なことばかりだ。

それでも、お前がこの世界で生きるなら、ここにいろ。



俺たちはマフィアだけど、人間なんだ。


一人じゃ背負いきれないものは、

俺が、

仲間が一緒に背負ってやる。






「トレイズ=フラモン、
お前、ボンゴレにこいよ」
「はぁ?! お前、なにいってんだよ?!」
「もちろん罪は償ってからだ
それから、いく場所がなかったらボンゴレにくればいい」



俺が、俺たちが。

お前を一人前の“人間”として、扱ってやる。

人間の幸せを教えてやるよ。





 




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